大銀杏(おおいちょう)は、十両と幕内の力士が結う髷のこと。髷の先が銀杏の葉に似た形に広がることからこの名がついた。それより下の番付の力士が結うのはちょんまげで、紙の紐で結んだ簡素な形になる。どちらも江戸時代に流行した髪形の流れをくむもので、伝統というだけでなく、倒れたときに頭を守る役目も果たしている。
出典: 日本相撲協会の英語版パンフレット「SUMO」(PDF)(sumo.or.jp/pdf/en/sumo_introduction.pdf・2026年9月17日取得)。協会の日本語ページに「大銀杏」を説明した面は見あたらず、規格と定義はこのPDFの記述による。関取の範囲は相撲の階級・番付の序列 一覧へ。
番付で結う髷が変わる|大銀杏は十両から
協会の英語版パンフレットは、髷の条を「力士の番付が、長い髪をどう結うかを決める」〔原文は英語・当サイト訳〕と書き出している。つまり、大銀杏を結えるかどうかを決めるのは番付である。腕前や人気で手に入るものではない。線は十両に入る。十両と幕内が大銀杏、幕下から序ノ口までがちょんまげである。
| 番付(地位) | 結う髷 | 協会の資料の記述 |
|---|---|---|
| 幕内(横綱・大関・関脇・小結・前頭) | 大銀杏 | 十両と幕内が結う、手のこんだほうの形 |
| 十両 | 大銀杏 | 同上。ここが大銀杏を結える下限 |
| 幕下 | ちょんまげ | 下の番付は、紙の紐で結ぶ簡素な形 |
| 三段目 | ちょんまげ | 同上 |
| 序二段 | ちょんまげ | 同上 |
| 序ノ口 | ちょんまげ | 同上 |
大銀杏とちょんまげの違い|読み方・名の由来・結び方
協会の英語版資料に日本語の表記は無く、この髷をローマ字で oichomage と綴っている。「大銀杏」という漢字と「おおいちょう」という読みは、当サイトがそれに当てたもので、協会がそう読ませているわけではない。銀杏はイチョウのこと。髷の先を左右に広げた形が銀杏の葉に似ている、というのが名の由来だと同じ資料は説明している。ちょんまげのほうに由来の説明はない。
| 大銀杏(おおいちょう) | ちょんまげ | |
|---|---|---|
| 結うのは | 十両・幕内の力士 | 幕下から序ノ口までの力士 |
| 形 | 手のこんだほう。髷の先が銀杏の葉に似た形になる | 簡素なほう |
| 結び方で協会が書いていること | (記述なし) | 紙の紐で結ぶ |
| 名の由来 | 銀杏の葉に似ることから | (記述なし) |
| ローマ字表記 | oichomage | chonmage |

当サイトの写真庫に、「大銀杏を結った姿」としてキャプションで名指しされた1枚が無い(「大銀杏が結えない時代」という言い方で触れた1枚が後述の記事にあるだけである)。このページに並べた3枚はいずれも田口が「髷」として撮り、そう書き残したものなので、キャプションもその通りにしてある。
なぜ力士は髷を結うのか|江戸の名残と、倒れたときの頭の保護
協会の説明は二段構えになっている。まず、大銀杏もちょんまげも江戸時代に流行した髪形に由来する。そして、それが今日まで残っているのは伝統のためだけではなく、倒れたときに頭を守る働きがあるからだと書いている。土俵は土を固めた上に薄く砂をまいたもので、力士は投げられれば頭から落ちることもある。ただし、髷がどう頭を守るのかという仕組みまでは、この資料に書かれていない。
協会の日本語の「相撲の歴史」も、江戸時代から変わらないものとして「土俵入り、番付表、化粧廻し、髷、着物、相撲の取組」を並べている(2026年9月17日確認)。化粧廻しのほうは化粧まわしとは?本まわしとの違いに分けてある。
髷は勝負にも関わる|土に着けば負け、つかめば反則
髷は、勝ち負けを決める体の一部として扱われる。飾りではない。協会の英語版資料は、土俵の内側で体のどこかが土に着けば負けになると説明したうえで、その「どこか」の例として膝・指先と並べて髷を挙げている。髷の先が土に着けば、その時点で負けである。
相手の髪に手をかけるのも禁じ手にあたる。同じ資料は、握りこぶしで打つこと・髪を引くこと・目つぶし・のどをしめること・腹や胸を蹴ることを禁止として並べている。日本語の相撲規則のほうは「相手の髪の毛を掴むこと」という書き方で、こちらは田口が次の記事のなかで引いている。どちらにしても、勝っていても反則負けになる。

この禁じ手には書き換えられた歴史がある。田口は、勢が千代鳳戦で髷をつかんだとして反則負けになった一番を取り上げ、相撲規則の禁手にある「相手の髪の毛を掴むこと」について「以前は故意にという言葉があったが、最近なくなった」と書いている(歴史から見た髷をつかんでの反則負け・2015年3月16日)。故意かどうかは第三者に判断しようがなく、それでいて髷をつかむことは勝負に直結する。だから「故意に」が外された、というのが田口の見立てである。
同じ記事で田口は、その前の時代の一番も掘り起こしている。1964(昭和39)年十一月場所12日目の海乃山対荒波戦で、荒波の指が海乃山の髷にかかって引き倒し、元結が切れて海乃山はざんばら髪になった。それでも軍配は荒波に上がり、物言いの末に軍配どおりになった。田口は「あれが反則負けにならないなら反則負けなど存在しないとまで批判された」と当時の反応を記している。
大銀杏を結えるようになる日と、髷と別れる日
十両に上がれば大銀杏、というのが協会の書いている線である。ただし番付が上がった力士がその場で結えるとは限らない。田口は幕内の土俵に上がりながら「まだ大銀杏を結えない力士」がいることを2024年3月24日の記事で書いており、ある力士については「大銀杏が結えない時代」という言い方で写真のキャプションを付けている(現代四股名事情・2016年8月7日)。番付とは別の条件があると読めるが、これは当サイトの読みで、その条件が何かは田口も協会も書いていない。ここではそこまでにしておく。
反対の端が、髷を落とす日である。田口は稀勢の里の引退相撲を伝えた記事で、師匠のとめばさみの場面を「ここで大銀杏に別れをつげた」と書いている(大盛況の中、稀勢の里髷との別れの日・2019年9月30日)。土俵の上で大銀杏という言葉が最後に出てくるのは、たいていこの場面になる。

その日の様子は田口が力士ごとに書き残している。琴欧洲・鶴竜・栃ノ心・豊山・千代の国。式の中身はそれぞれの記事にゆずる。
大銀杏についてよくある質問
Q. 相撲の「大銀杏」とは何ですか?
十両と幕内の力士が結う髷です。髷の先が銀杏の葉に似た形になることからこの名がついた、と協会の英語版資料が説明しています。
Q. 大銀杏の読み方は?
「おおいちょう」と読みます。協会の英語版資料はローマ字で oichomage と綴るだけで日本語の表記を載せていないため、漢字と読みは当サイトが当てたものです。
Q. ちょんまげと大銀杏の違いは何ですか?
結える番付が違います。十両・幕内が大銀杏、幕下から序ノ口までがちょんまげです。ちょんまげは紙の紐で結ぶ簡素な形だと協会の資料は書いています。
Q. 大銀杏を結えるのは誰ですか?
番付が十両以上の力士です。番付が髷の形を決める、というのが協会の書き方です。
Q. 力士はなぜ髷を結うのですか?
江戸時代に流行した髪形の名残であることに加えて、倒れたときに頭を守る働きがあるからだと協会の資料は説明しています。
Q. 大銀杏を結えない力士がいるのはなぜですか?
番付が十両に届いていない場合はちょんまげです。十両以上でも結えないことがあり、田口はそうした力士について書いていますが、その条件を協会は公表していないので、このページでは踏み込みません。個々の力士の髪の事情までは書きません。
Q. 髷をつかんだらどうなりますか?
反則負けになります。相手の髪を引くことは禁じ手として協会の資料に並んでいます。
Q. 髷が土についたら負けですか?
負けです。体のどこかが土に着けば負けで、その例として協会の資料は膝・指先と並べて髷を挙げています。
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