横綱審議委員会(横審)は、日本相撲協会が定款で置く諮問機関で、横綱の推薦など横綱に関する案件について協会の諮問に答え、自ら進言もする。委員は協会の外の有識者で、横綱の推挙は横審の答申か進言を受け、理事会の承認を経て番附編成会議で決まる(定款第49条・第52条、協会「協会の使命・組織」)。設置が決まったのは昭和25年1月29日の番付編成会議だった。
委員長は大島理森氏(2025年1月から)で、委員は2025年の時点で9人(報道)。会合は毎場所の定期委員会のほか、東京の場所(一月・五月・九月)には稽古総見と本場所総見がある(協会の事業報告書・令和5〜7年度)。
※委員の名簿は協会が公表していないため、委員の名前は、別々の2社の報道で確かめられたものだけを載せた(2026年9月27日確認)。昭和25年の経緯は、相撲記者・田口 通廣が2017年10月に横綱の歴史をたどる連載の一編として書いた記事による。
横綱審議委員会の役割|協会の諮問にOKを出す
現代は、横綱に推挙する力士が出現すると、協会はまず横綱審議委員会に諮問する。横綱審議委員会がOKを出してはじめて協会が最終決定し、こうして横綱が誕生する。
協会の定款は第52条で横綱審議委員会を置き、その仕事を「横綱推薦、その他横綱に関する諸種の案件につきこの法人の諮問に答申し、又はその発議に基づき進言するものとする。」と定めている。委員会の構成と運営は、理事会が別に定める(同条3項)。
横綱が決まるまでの手順は、第49条3項が「横綱の推挙は、横綱審議委員会の答申又は進言により、理事会の承認を経て、番附編成会議において決定する。」と定めている(定款・令和4年3月28日施行の版・2026年9月27日確認)。
協会は組織の説明で横綱審議委員会を諮問機関とし、「協会外の有識者の委員によって構成され、主に横綱の推薦を行う機関」と書いている(協会の使命・組織)。最近の2人では、第74代の豊昇龍が2025年1月29日、第75代の大の里が同じ年の5月28日に、協会が番付編成会議と理事会を開いて横綱昇進を決めた(協会のお知らせ「第74代横綱 豊昇龍 誕生」「第75代横綱 大の里 誕生」)。
横綱推薦の内規|大関で2場所連続優勝が原則
横審が横綱に推すかどうかを決める目安には、内規がある。協会はこの内規をサイトに載せていない。辞書(デジタル大辞泉)は、横審が「2場所連続優勝、またはそれに準ずる成績」を基準に審議して答申し、協会はその答申を尊重して理事会で昇進を決める、と説明している(コトバンク)。
田口は2020年の記事で、内規を次のように書き写している(田口「横綱審議委員会のあり方」・2020年11月27日)。
- 「一、横綱に推薦する力士は品格、力量が抜群であること。」
- 「二、今後の横綱推薦に対しては、横綱審議委員会が、大関で二場所連続優勝した力士を横綱に推薦することを原則とする。」
- 「三、第二項に準ずる成績をあげた力士を推薦する場合は、全委員の一致の決議を必要とする。」
田口は第3項に「(後3分の2に変更)」と添えていて、全委員の一致だった決議の条件は、のちに3分の2に変わった。
成績が振るわない横綱には、横審は「激励」「注意」「引退勧告」などを決議できる(共同通信の用語解説(コトバンク) 2025年5月26日/デイリースポーツ 2026年7月28日)。2020年十一月場所の後には、休場の多かった白鵬と鶴竜に「注意」を決議した(共同通信の用語解説(コトバンク) 2025年5月26日/田口「横綱審議委員会のあり方」 2020年11月27日)。2026年7月27日の定例会合では、名古屋場所で不振だった両横綱にこうした決議を出さなかった(デイリースポーツ 2026年7月28日/埼玉新聞〔共同〕 2026年7月27日)。
田口は同じ2020年の記事で、稀勢の里に出た「激励」と白鵬・鶴竜への「注意」を挙げ、この言葉は適切とは思えないと見ている。
内規で昇進した横綱の直前の成績は「横綱昇進の条件とは」に、成績が振るわない横綱と横審の決議は「横綱が負け越したらどうなる」にまとめている。
いつ開くのか|毎場所の定期委員会と、東京の場所の稽古総見・本場所総見
協会の事業報告書は、横審の会合を「稽古総見」「本場所総見」「定期委員会」に分けて場所ごとに書いている。令和7年(2025年)は定期委員会が6場所とも開かれ、稽古総見と本場所総見は一月・五月・九月の東京の3場所だった。
| 場所 | 稽古総見 | 本場所総見 | 定期委員会 |
|---|---|---|---|
| 一月場所 | 開催 | 開催 | 開催 |
| 三月場所 | - | - | 開催 |
| 五月場所 | 開催(一般公開) | 開催 | 開催 |
| 七月場所 | - | - | 開催 |
| 九月場所 | 開催 | 開催 | 開催 |
| 十一月場所 | - | - | 開催 |
令和5年(事業報告書)と令和6年(事業報告書)も同じ形で、違いは令和5年一月場所の稽古総見が「中止」だったことと、一般公開した回(令和5年は九月場所、令和6・7年は五月場所)である。2026年は5月1日に、国技館の本土俵で稽古総見を一般公開した(協会のお知らせ「横綱審議委員会による稽古総見の一般公開」)。
定期委員会は、報道では「定例会合」と呼ばれ、場所が終わったあとに開かれる。2026年七月場所の後は、7月27日に両国国技館で開かれた(デイリースポーツ 2026年7月28日/埼玉新聞〔共同〕 2026年7月27日)。本場所総見は、東京の場所の期間中に委員が升席から取組を見るものである(デイリースポーツ 2025年9月18日/デイリースポーツ〔共同〕 2026年9月17日)。

稽古総見で土俵がどう進むか、一般公開にどう入るかは「稽古総見とは」にまとめている。
委員の顔ぶれ|委員長は大島理森氏、委員は2025年の時点で9人
協会は委員の名簿を公表していない。定款は委員会の構成を理事会が別に定めるとしていて、協会の事業報告書には理事会の決議事項として「横綱審議委員会委員委嘱の件」が載る(2023年1月26日・2024年2月1日・2025年1月30日。名前は書かれていない)。
委員長は、2025年1月から元衆院議長の大島理森氏が務めている(TBS NEWS DIG(青森テレビ) 2025年1月30日/共同通信の用語解説(コトバンク) 2025年5月26日)。2026年も、定例会合のあとに委員長として会見している(デイリースポーツ 2026年5月25日/埼玉新聞〔共同〕 2026年7月27日)。委員の数は2025年の時点で9人だった(デイリースポーツ 2025年1月27日/共同通信の用語解説(コトバンク) 2025年5月26日)。
田口は2020年の記事で、委員について「もっと年齢層を幅広くし、女性を加えた組織にしてはいかがだろうか。」と書いた(田口「横綱審議委員会のあり方」・2020年11月27日)。2022年に池坊保子氏と紺野美沙子氏が加わったときは、女性という点にこだわらないほうがいいとしたうえで、相撲を愛する人が無名でも加わったほうが組織として好ましいと書いている(田口「横綱審議委員会の存在意義って何」・2022年4月6日)。
では、横綱審議委員会はいつ、どのような経緯で誕生したのか。
昭和25年春場所|3横綱が総崩れ
昭和25年春場所、羽黒山、東富士、照国の3横綱は総崩れとなった。2日目に東富士は神風に、照国は吉葉山に敗れ、東富士は翌日から、照国は4日目から休場した。
羽黒山は3勝したあと神風に敗れ、5日目から休場してしまった。早々と横綱不在となり、非難ごうごうとなった。なお、東富士と羽黒山は途中から出場している。
| 横綱 | 昭和25年春場所の経過 |
|---|---|
| 羽黒山 | 3勝のあと神風に敗れ、5日目から休場(途中から出場) |
| 東富士 | 2日目に神風に敗れ、翌日から休場(途中から出場) |
| 照国 | 2日目に吉葉山に敗れ、4日目から休場 |

この場所は、前場所まで不成績を繰り返していた横綱前田山が引退させられ、4横綱が解消された場所だった。蔵前仮設国技館で興行が行われた記念すべき場所でもある。
横綱格下げの決定と世論の反発
世間の非難に協会はあわてた。1月20日の役員会で、横綱といえども2場所連続で負け越したら大関に落とすと決めた。いわゆる横綱格下げである。
ところが、思いもよらない反響が待ち受けていた。横綱格下げに、世論が大反発したのである。
「横綱はチャンピオンではない。チャンピオン同様の成績をあげて初めてなれるものである」「功なり名を遂げた者は力が衰えたら引退するだけ。格下げはよろしくない」というわけである。
昭和25年1月29日、横綱審議委員会の設置が決まる
これを受けて協会は、1月29日に取締、理事、監事、検査役が出席した番付編成会議で、次の結論に至った。
- 1. 横綱格下げは弊害があるので白紙に戻す
- 2. 5月の夏場所までに、相撲愛好家、有識者による、横綱のいっさいを審議する横綱審議委員会を設置する
こうした決定に世論は納得した。かくして横綱審議委員会は誕生した。

それでも残る課題|横綱どうしの差
ただ、これで弱い横綱、物足りない横綱がなくなったかというと、そうでもない。田口は、横綱が抱える問題は、同じ横綱でもあまりにも差がありすぎる点だと書く。
そのうえで、横綱審議委員会の存在価値をぜひ示していただきたい、と結んでいる。
横綱審議委員会についてよくある質問
Q. 横綱審議委員会とは何ですか?
A. 日本相撲協会が定款で置く諮問機関で、横綱の推薦など横綱に関する案件について協会の諮問に答え、自ら進言もします(定款第52条)。委員は協会の外の有識者です(協会「協会の使命・組織」)。
Q. 現在の横綱審議委員は誰ですか?
A. 委員長は大島理森氏(2025年1月から)で、委員は2025年の時点で9人です(報道)。名前を別々の2社の報道で確かめられたのは大島理森・池坊保子・紺野美沙子の3人です(2026年9月27日確認)。協会は委員の名簿を公表していません。
Q. 横綱審議委員会はいつ開かれますか?
A. 協会の事業報告書(令和5〜7年度)では、定期委員会が毎場所、稽古総見と本場所総見が一月・五月・九月の東京の場所に開かれています。定期委員会(報道では定例会合)は場所が終わったあとに開かれ、2026年七月場所の後は7月27日でした(報道)。
Q. 横綱に推薦される基準は?
A. 辞書(デジタル大辞泉)は、2場所連続優勝かそれに準ずる成績を基準に審議すると説明しています。田口の2020年の記事は内規を、大関で2場所連続優勝した力士を推薦することを原則とし、それに準ずる成績の力士を推薦するときは全委員の一致(のちに3分の2)の決議が要る、と書き写しています。
Q. 横綱審議委員会はいつ、なぜできましたか?
A. 昭和25年1月29日の番付編成会議で、5月の夏場所までに置くことが決まりました。3横綱が総崩れした春場所の後に協会が決めた横綱格下げが世論の反発で白紙になり、その代わりに設けられました(田口の記事による)。
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