史上最弱の横綱は誰か|弱い横綱の4つの条件【前田山・栃ノ海】

NHKの番組は、横綱・前田山を「史上最弱の横綱」と紹介した。本当にそうだろうか。前田山の成績は芳しくない。しかし、前田山に劣らずワーストな横綱はほかにもいた。筆者 は弱い横綱の条件を「①短命 ②成績がよくない ③優勝が少ない ④休場が多い」の4つと定めて考える。漫画家のやくみつる氏が横綱について語る最も古い記憶は、父が横綱・栃ノ海を「弱い、弱い」と嘆いていたことだという。

※昭和・平成の横綱を対象にした考察である。在位が短かった横綱を時代順にたどった一覧は弱い横綱・短命横綱の一覧に、負け越した場所そのものと「負け越したら番付はどうなるのか」は横綱が負け越したらどうなるに分けてまとめた。

目次

NHKは前田山を「史上最弱の横綱」と呼んだ

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NHKが「天道は人を殺さず~異端の横綱 逆転人生」という番組で前田山を取り上げたことがあった。いま大相撲が国際化しているなか、外国人をスカウトして育てた先達として、また人間・前田山にスポットをあてた内容だった。その番組で気になった点がある。前田山を「史上最弱の横綱」と紹介していたことである。

本当にそうだろうか。確かに前田山の成績は芳しくない。しかし、前田山に劣らずワーストな横綱はいた。同じ横綱といっても、ピンからキリまで差がありすぎるのが現実である。それは、横綱が安易につくられてきたことの裏返しでもある。

前田山のブロマイド
<前田山のブロマイド>

弱い横綱の4つの条件

では、弱い横綱とは何をもって弱いとするのか。ここでは次の4つを条件とした。

  • 短命であること
  • 成績がよくないこと
  • 優勝が少ないこと
  • 休場が多いこと

この4つは互いに関係し合う。休場が多ければフル出場が減り、成績は伸びず、優勝からも遠ざかる。そして横綱の務めを果たせないまま、在位が短く終わる。弱い横綱は、これらが連鎖した結果として生まれることが多い。

やくみつる氏と栃ノ海 ―「弱い、弱い」

漫画家のやくみつる氏は、横綱についての最も古い記憶として、父が横綱・栃ノ海を「弱い、弱い」と嘆いていたことを挙げている。これはスコラマガジン刊の「大相撲最強横綱列伝」で語られたものである。実際、栃ノ海の相撲は横綱としての成績をあげられず、負けが込んで苦戦続きだった。最後まで浮上することなく、若くして引退した。大関のままであれば、名人大関と呼ばれていたかもしれない。それだけに惜しまれる横綱だった。

では、在位が短かった横綱は誰か

弱い横綱の第1の条件は「短命」である。横綱が地位として定まった常陸山以降で、在位が短い、あるいはフル出場が極端に少なかった横綱を時代順にたどると、2代目西ノ海・武蔵山・前田山・琴櫻・三重ノ海・双羽黒・旭富士・3代目若乃花・稀勢の里といった名前が挙がる。その多くは高齢での昇進か、大ケガが原因だった。具体的な顔ぶれと理由は弱い横綱・短命横綱の一覧にまとめている。

弱い横綱の4条件は、協会公式のどの数字で確かめられるか

上に挙げた4つの条件は、日本相撲協会が公表している数字で1つずつ裏を取れる。どの条件をどの欄で見るのかを先に並べておく。

条件協会公式で見る欄下の表の列
①短命歴代横綱の「横綱在位」(開始年月〜終了年月)横綱在位・在位月数
②成績がよくない力士プロフィールの「幕内戦歴」の勝敗幕内通算成績・幕内勝率
③優勝が少ない歴代横綱一覧の「優勝」欄優勝
④休場が多い力士プロフィールの「幕内戦歴」の休幕内通算成績のうち「◯休」
弱い横綱の4条件と、協会公式サイトでの確認先

「弱い」と名前が挙がった横綱10人の公式記録|在位が短い順

この記事で名前が挙がった横綱10人を、協会公式の記録だけで並べた。在位が短い順で、同じ月数のときは代位の順にしてある。幕内通算成績は横綱在位中の成績ではない。協会は横綱在位中だけの勝敗を公表しておらず、前頭・大関時代を含む幕内通算しか出していない。そのため10人とも同じ物差し(幕内通算)で並べている。在位月数は在位の開始月から終了月までを数えた月数で、場所数ではない。幕内勝率は勝÷(勝+敗)で、分・預・休は分母に入れていない。

代位四股名(出身地)横綱在位在位月数幕内通算成績(公式表記)幕内勝率優勝この記事での言及
第53代琴櫻 傑将
鳥取県倉吉市
昭和48年3月~昭和49年5月15か月553勝345敗77休(65場所)0.6165本文「琴櫻」。第53代・琴櫻傑将
第57代三重ノ海 剛司
三重県松阪市
昭和54年9月~昭和55年11月15か月543勝413敗1分51休(68場所)0.5683本文「三重ノ海」
第60代双羽黒 光司
三重県津市
昭和61年9月~昭和62年11月15か月197勝87敗16休(20場所)0.6940本文「双羽黒」
第63代旭富士 正也
青森県つがる市
平成2年9月~平成4年1月17か月487勝277敗35休(54場所)0.6374本文「旭富士」
第66代若乃花 勝
東京都中野区
平成10年7月~平成12年3月21か月487勝250敗124休(58場所)0.6615本文「3代目若乃花」。若乃花勝
第72代稀勢の里 寛
茨城県牛久市
平成29年3月~平成31年1月23か月714勝453敗97休(85場所)0.6122本文「稀勢の里」
第39代前田山 英五郎
愛媛県八幡浜市
昭和22年11月~昭和24年10月24か月206勝104敗39休(27場所)0.6651NHKが「史上最弱の横綱」と紹介
第25代西ノ海 嘉治郎
鹿児島県西之表市
大正5年5月~大正7年5月25か月106勝38敗27分9預70休(25場所)0.7361本文「2代目西ノ海」。公式の西ノ海嘉治郎3人のうち2人目
第49代栃ノ海 晃嘉
青森県南津軽郡田舎館村
昭和39年3月~昭和41年11月33か月315勝181敗104休(40場所)0.6353やくみつる氏の父が「弱い、弱い」と嘆いた横綱
第33代武蔵山 武
神奈川横浜市
昭和11年1月~昭和14年5月41か月174勝69敗2分71休(28場所)0.7161本文「武蔵山」
代位・四股名・出身地・横綱在位・優勝は日本相撲協会公式「歴代横綱」、幕内通算成績は同「力士プロフィール」より2026年8月20日に取得。在位月数と幕内勝率のみ当サイトで算出(式は上の本文のとおり)

比べるための物差し|優勝の多い横綱5人の同じ数字

数字だけを見ても、それが低いのかどうかは分からない。同じ列を、優勝回数の多い横綱5人でも並べておく。上の10人と下の5人は、まったく同じ出典・同じ算出式である。

代位四股名(出身地)横綱在位在位月数幕内通算成績(公式表記)幕内勝率優勝
第69代白鵬 翔
モンゴル・ウランバートル
平成19年7月~令和3年9月171か月1093勝199敗253休(103場所)0.84645
第48代大鵬 幸喜
北海道川上郡弟子屈町
昭和36年11月~昭和46年5月115か月746勝144敗136休(69場所)0.83832
第58代千代の富士 貢
北海道松前郡福島町
昭和56年9月~平成3年5月117か月807勝253敗144休(81場所)0.76131
第55代北の湖 敏満
北海道有珠郡壮瞥町
昭和49年9月~昭和60年1月125か月804勝247敗107休(78場所)0.76524
第35代双葉山 定次
大分県宇佐市
昭和13年1月~昭和20年11月95か月276勝68敗1分33休(31場所)0.80212
出典・算出式は上の表と同じ(日本相撲協会公式・2026年8月20日取得)

史上最弱の横綱についてよくある質問

史上最弱の横綱は誰ですか?

NHKの番組は前田山を「史上最弱の横綱」と紹介しました。ただし、前田山に劣らず成績の振るわなかった横綱はほかにもいて、何を基準に弱いとするかで評価は変わります。本記事では弱い横綱の条件を4つに整理して考えています。

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弱い横綱の条件とは何ですか?

①短命、②成績がよくない、③優勝が少ない、④休場が多い、の4つです。これらが連鎖して、横綱の務めを果たせないまま在位が短く終わることが多くなります。

「弱い」と言われた横綱には誰がいますか?

NHKが挙げた前田山、やくみつる氏の父が嘆いた栃ノ海などです。在位が短かった横綱の一覧は弱い横綱・短命横綱の一覧に、優勝のないまま横綱になった力士は優勝経験のない横綱にまとめています。

関連記事:弱い横綱・短命横綱の一覧優勝経験のない横綱横綱の連敗記録横綱が負け越したらどうなる|負け越した横綱の全記録

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この記事を書いた人

少年漫画雑誌、日経関連の編集者を経て独立。現在は大相撲を専門に取材するライター。ほぼ毎場所、自ら土俵際で撮影している。にほんブログ村 相撲・大相撲カテゴリでランキング1位。

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