現在の区分で不知火型を選んだ横綱は、第22代・太刀山から第73代・照ノ富士まで12人。現役の横綱は豊昇龍・大の里ともに雲竜型で、不知火型の現役横綱はいない(2026年7月時点)。見分け方は土俵入りのせり上がりで、両手を左右に大きく開くのが不知火型、左手を胸元に当て右手を伸ばすのが雲竜型。綱の結び目の輪も、不知火型は2つ・雲竜型は1つと異なる。
※型の名称と「攻守」の意味づけには歴史的な留保がある(本文末尾の田口の検証記事を参照)。歴代の型はいずれも複数の公開資料・報道の照合による。
雲竜型と不知火型の違い
横綱土俵入りには雲竜型と不知火型の二つがある。違いがはっきり出るのは、腰を沈めてから立ち上がる「せり上がり」の所作である。雲竜型は左手を脇腹のあたりに当て、右手を伸ばしてせり上がる。攻守兼備を表すと説明されることが多い。不知火型は両手を左右いっぱいに開いてせり上がり、攻めを表すとされる。腰に締める綱も異なり、背中の結び目の輪が雲竜型は1つ、不知火型は2つある。テレビ中継や写真で型を見分けるなら、せり上がりの両手と綱の輪を見ればよい。
ただし、この「攻め」「攻守兼備」という意味づけに明確な根拠はないと指摘されている。この点は記事の後半で改めて触れる。
不知火型の横綱一覧|歴代12人
不知火型は少数派である。現在の区分で不知火型とされる横綱は次の12人になる。
| 代 | 四股名 | 時代 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 22 | 太刀山 | 明治末〜大正 | 現在の区分で最初の不知火型とされる |
| 36 | 羽黒山 | 昭和10年代〜28年 | 立浪部屋の名横綱 |
| 43 | 吉葉山 | 昭和29〜33年 | 横綱昇進後は優勝なし |
| 51 | 玉の海 | 1970〜71年 | 27歳で現役のまま急逝 |
| 53 | 琴櫻 | 1973〜74年 | 現大関・琴桜の祖父 |
| 59 | 隆の里 | 1983〜86年 | のちに3代目若乃花へ型を指導 |
| 60 | 双羽黒 | 1986〜87年 | 幕内優勝のないまま廃業 |
| 63 | 旭富士 | 1990〜92年 | 現・伊勢ヶ濱親方 |
| 66 | 3代目若乃花 | 1998年昇進 | 隆の里の指導で不知火型を選択 |
| 69 | 白鵬 | 2007〜21年 | 優勝45回・歴代最多 |
| 70 | 日馬富士 | 2012〜17年 | 伊勢ヶ濱部屋 |
| 73 | 照ノ富士 | 2021〜25年 | 序二段からの復活で昇進 |
玉の海の急逝については横綱の現役死亡3例で、吉葉山・双羽黒ら優勝のなかった横綱については横綱で優勝なしの記録で詳しく扱っている。
現役横綱の型は?|豊昇龍・大の里はともに雲竜型
2026年現在の東西横綱は、二人とも雲竜型である。豊昇龍は2025年の昇進にあたり、元横綱・武蔵丸の指導で雲竜型を選んだと報じられた。大の里は師匠の二所ノ関親方(元横綱・稀勢の里)と同じ雲竜型を選び、2025年5月30日に明治神宮で初披露している。稀勢の里自身も2017年の昇進時、明治神宮で雲竜型を披露した。つまり照ノ富士が2025年1月に引退して以来、不知火型の土俵入りは本場所から姿を消している。
型は師匠から弟子へ受け継がれる
どちらの型を選ぶかは横綱本人の選択だが、師匠や部屋の系譜の型を継ぐことが多いと解説される。分かりやすいのが伊勢ヶ濱部屋で、不知火型だった旭富士が親方となり、弟子の日馬富士も照ノ富士も不知火型を選んだ。3代目若乃花は不知火型だった隆の里の指導を受けている。雲竜型の稀勢の里の弟子・大の里が雲竜型を選んだのも、この流れにある。
「不知火型は短命」のジンクスと、それを破った白鵬
不知火型には「短命」のジンクスが語られてきた。決定的な契機は、玉の海が1971年10月、虫垂炎手術の直後に27歳で現役のまま急逝したことである。その後も、琴櫻・隆の里・双羽黒・旭富士・3代目若乃花と在位の短い横綱が続き、双羽黒にいたっては幕内優勝のないまま土俵を去った。こうした経緯から「不知火型を選ぶと横綱在位が短い」と繰り返し報じられてきた。
このジンクスを正面から打ち破ったのが白鵬である。不知火型のまま在位84場所・優勝45回という歴代最多の記録を積み上げ、ジンクスは事実上払拭されたと語られるようになった。続く日馬富士、そして序二段から復活して昇進した照ノ富士も不知火型を選んでいる。
型の名は「あべこべ」かもしれない
最後に、この記事の前提を揺るがす話をひとつ。実は、江戸から明治の力士だった雲竜と不知火が、実際にどんな土俵入りをしたのかは正確には伝わっていない。現在の型の名は昭和16年に相撲評論家・彦山光三が断定したもので、錦絵などの資料からは、名前と型が入れ替わっている可能性さえ指摘されている。この問題は横綱の土俵入りの型の名称と錦絵で検証する型の名の問題点で田口が詳しく検証している。
Q. 不知火型の現役横綱はいますか?
いません(2026年7月時点)。豊昇龍・大の里はともに雲竜型で、最後の不知火型は2025年1月に引退した照ノ富士です。
Q. 不知火型の横綱は何人いますか?
現在の型区分で12人です。太刀山・羽黒山・吉葉山・玉の海・琴櫻・隆の里・双羽黒・旭富士・3代目若乃花・白鵬・日馬富士・照ノ富士。
Q. 雲竜型と不知火型はどこで見分けますか?
せり上がりで両手を左右に開けば不知火型、左手を胸元に当てれば雲竜型です。綱の結び目の輪も不知火型は2つ、雲竜型は1つです。
Q. なぜ不知火型は短命と言われるのですか?
玉の海の急逝や双羽黒の廃業など在位の短い横綱が続いたためです。白鵬が在位84場所・優勝45回を積み上げ、ジンクスは払拭されたと語られています。