大相撲の巡業とは|本場所との違いと一日の流れ 9時開場・稽古・11時半取組・13時土俵入り【協会公式】

巡業は、本場所と本場所の合間に大相撲一行が地方を回って行う興行である。日本相撲協会は目的を「相撲道の普及」「地域の活性化」「青少年育成」と説明している。本場所が初日から千秋楽まで15日間続くのに対し、巡業は1会場1日で組まれるのが基本で、力士は打ち出しの後バスで次の巡業地へ移る(同じ会場で2日間行う例もある)。午前9時頃に開場し、9時半頃から幕下以下の稽古が始まって関取へ続き、11時半頃から取組、13時頃に土俵入り、14時半頃の弓取式で終わる。本場所では組まれない初切(しょっきり)や相撲甚句といった「お好み」が入るのも巡業だけである。

出典: 日本相撲協会巡業の一日巡業部より本場所の年間日程表(いずれも2026年9月17日確認)。開催地と日程は年ごとに変わるため、協会の巡業スケジュールで確かめてほしい。

目次

巡業とは何か|協会が掲げる3つの目的

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協会の巡業部は、巡業の役割を「地方巡業を通じ全国のファンを大切に、相撲道普及に努めると共に、全国の子供たちに夢を与え、青少年育成に役立てば」と書いている。巡業の一日を紹介するページでも、冒頭に「相撲道の普及、地域の活性化、青少年育成を目的として行われています」と置かれている。番付を動かすための興行ではない。力士のほうが土俵のある土地へ出向いていく興行である。

一行の規模も本場所とは違う。協会は「親方や力士など大相撲一行、約200名は前日、巡業地に乗り込みます」と説明している。前日に入る。翌朝には体育館が開き、夕方には次の土地へ動く。この移動の連続が巡業である。

巡業の一日の流れ|9時開場から15時の移動まで(協会公式)

協会は「巡業の一日」で時間割を公表している。下の表はその記述をそのまま並べたもので、当サイトが現地で計った時刻ではない。協会自身が「一日の流れを簡単にご紹介します」と断っている概略である。

目安の時刻何が行われるか協会の説明(要約)
前日巡業地へ出発親方や力士など大相撲一行、約200名が前日に乗り込む
9:00頃開場〜朝太鼓呼出しが会場の外で太鼓を打ち、開場を知らせる
9:30頃〜10:30頃稽古幕下以下から始まり、時間を追って幕内・大関・横綱の稽古になる
11:30頃〜取組開始幕下以下の取組。序二段・三段目・幕下と進む。地元出身の力士が出ると歓声が大きくなる
取組の合間お好み(催し物)初切・相撲甚句・櫓太鼓打分など。勧進元が用意する髪結い実演や横綱綱締め実演が入ることもある
13:00頃〜幕内土俵入り中入り(休憩)のあと、化粧廻しを締めた幕内力士の土俵入り
13:00頃横綱土俵入り太刀持ち、露払いを従えての横綱土俵入り
13:30頃幕内取組結びの一番で館内の盛り上がりが最高潮になる
14:30頃弓取式〜打ち出し結びの一番のあと弓取式が行われ、興行が終了する
15:00頃次の巡業地へ力士たちはバスに乗って次の巡業地に向かう
日本相撲協会「巡業の一日」より(2026年9月17日に当サイトが取得して確認)。同ページは冒頭で「午後3時頃に打ち出し(終了)」とも書いており、時刻はいずれも目安である

本場所の土俵上の時間割と比べると、巡業は全体が3時間前後早い。幕内土俵入りは本場所が15時40分頃で、巡業は13時頃である。時刻を並べた比較は横綱土俵入りは何時から?|本場所は15:55頃・巡業は13:00頃にまとめてあるので、そちらを見てほしい。

もっとも、この時間割どおりに進むとは限らない。田口は2025年4月14日の靖国神社奉納相撲について「稽古の後プログラムは序二段・三段目取組。相撲甚句。一人だけ化粧まわしでなく競技用まわしであった」「幕下の取組。初切りのあと中入りとなった。十両取組は一部が中入りに組みいれられた」と書いている(靖国巡業にみた大相撲人気・2025年4月14日)。お好みの入る位置も、取組の組み方も動く。決めているのは開催地と勧進元である。同じ記事には「8時25分に並んだが先頭ははるかかなたであった」ともある。開場が9時頃だとすれば、その30分以上前に列ができていたことになる。

巡業と本場所の違い|日数・主催・稽古・お好み・成績

「巡業と本場所は何が違うのか」は、時刻よりも興行の組み立てを見たほうが早い。協会の公表と、当サイトが確認できた範囲だけを並べる。

比べる点本場所巡業
日数年6場所。初日から千秋楽まで15日間(令和8年九月場所なら9月13日〜27日)1会場1日が基本。打ち出しの後は次の巡業地へ移る。ただし2日間続ける会場もある(令和8年は仙台市8月10〜11日とうるま市12月19〜20日の2件)
会場国技館・エディオンアリーナ大阪・IGアリーナ・福岡国際センターの4か所市町村の体育館やアリーナ、神社の相撲場など。協会のスケジュール欄に会場名が並ぶ
朝の稽古協会が公表する土俵上のタイムスケジュールに稽古の時間は無い9時半頃から10時半頃まで、客席から稽古が見られる
お好み(催し物)組まれない初切・相撲甚句・櫓太鼓打分など。協会は「本場所では見られない一味違ったお好み」と書いている
取組の扱い星取表と番付が協会から公表される。星取表は「令和八年九月場所」、力士データの「過去の成績・番付」も場所単位協会の星取表と過去の成績・番付は本場所ごとに作られていて、巡業の勝敗を載せた欄は当サイトが見た範囲では無かった
問い合わせ先協会の入場券情報開催地ごとの事務局・実行委員会・プレイガイド。協会のスケジュールにも開催地ごとに別の連絡先が並ぶ
日本相撲協会「巡業の一日」「本場所の年間日程表」「巡業スケジュール」より(2026年9月17日確認)。取組の扱いの行だけは協会の星取表過去の成績・番付を2026年9月18日に当サイトが開いて確かめた(どちらも場所単位で、巡業の欄は無かった)。空欄を作らないための推測はしていない

取組の性質については、田口が元力士から聞いた言葉を残している。「巡業の取組でケガして本場所を休むようなことがあると、本末転倒になります」。これを受けて田口は「つまり、巡業の取組はケガをしない程度にやるものなのである」と書いた(巡業での稽古のあり方・2017年4月6日)。同じ記事で田口は、今の巡業が大合併で行われることに触れ、「これで十分な稽古ができるのかというと大いに疑問である。今の巡業は稽古後、出し物や取組まである」とも書いている。巡業の土俵の見方は、この2行に尽きる。

お好みとは|初切・相撲甚句・櫓太鼓打分・髪結実演

巡業の楽しみ方を1つ挙げるなら、取組の合間に入る「お好み」である。協会は4つを紹介している。

お好み協会の説明
初切(しょっきり)2人の力士が相撲の禁じ手や珍しい決まり手をコミカルに説明する。古く江戸時代より行われており、「初」は始め、「切」は終わりの意味
相撲甚句(すもうじんく)美声の力士が唄う。昔は甚句のことを型と呼び、土俵の上で攻める型・守る型を見せながら唄っていた。現在は化粧廻しを締め、手拍子と足の音頭に合わせて唄う
櫓太鼓打分(やぐらだいこうちわけ)寄せ太鼓・一番太鼓・はね太鼓を打ち分ける。寄せ太鼓は相撲会所の時代に親方衆を呼び寄せる合図、一番太鼓は天下泰平・五穀豊穣を祈る清めの太鼓、はね太鼓は「またおいでをお待ちしています」の意味で打たれる
髪結実演(かみゆいじつえん)床山が大銀杏を結う様子を見せる。大銀杏を結えるのは十枚目以上の力士。協会は「床山が大銀杏を結う技術を習得するには10年以上かかると言われています」と書いている
日本相撲協会「巡業の一日」のお好みの説明より(2026年9月17日確認)。このほか勧進元が用意する横綱綱締め実演などが入ることもある、と協会は書いている

はね太鼓には但し書きがある。協会は「1日興行や千秋楽では打たれていません」と説明している。ここで分けて読みたいのは、打ち出しの後に実際に打たれるはね太鼓と、お好みの櫓太鼓打分で呼出しが打ち分けてみせるはね太鼓が別物だということ。1日興行の巡業で聞けるのは後者になる。櫓太鼓打分がお好みとして披露されるようになった経緯を、協会は「名人呼出し 太郎」が始めたものと書いている。

海外でも行われてきた巡業(実写)

巡業は国内だけのものではない。田口は海外巡業について「2013年以来ずっと実現していない。いつの間にか10年が経ってしまった」と2023年に書き、自分が行った2回を振り返っている。2006年8月19日・20日の台湾(台北ドーム)と、2013年8月24日・25日のインドネシア(ジャカルタ)。いずれもトーナメント戦だった(海外巡業思いつくまま・2023年4月22日)。

台湾巡業の優勝力士に目録が手渡される場面(2006年8月19日・台北ドーム)
<朝青龍が台湾巡業で優勝>(キャプションは田口の記事の原文どおり)。手にした目録には「日本大相撲台灣場所優勝」「民國九十五年八月十九日」とあり、記事本文の2006年8月19日と一致する。

写真:田口 通廣(撮影)。ファイル名に撮影日が入っていないため、撮影時期は記事本文と写真に写る目録の日付による。国内巡業を写した当サイトの写真は無いので、ここでは載せていない。

主催者についても田口の記述がある。「巡業は協会主催ではなく、勧進元が主催者である」(同記事)。協会のスケジュールを見ると、開催地ごとに実行委員会・巡業事務局・プレイガイドと問い合わせ先が別々に並んでいて、この形と合う。巡業に一律の料金が無いのはこのためで、席種も値段も窓口も、その土地の勧進元が決める。当サイトでは金額を書かない。協会の巡業スケジュールから開催地のページへ進んで確かめてほしい。

巡業は年に何回あるか|春・夏・秋・冬。ただし4つとは限らない

巡業は春・夏・秋・冬のシーズン単位で組まれ、1シーズンで2週間から1か月ほど、ほぼ連日で各地を回る(令和8年なら春が3月29日から4月26日、夏が8月2日から8月30日、秋が10月6日から10月25日、冬が11月29日から12月20日。当サイトが協会のスケジュールの初日と最終日を読み取った)。ただし「年に4回」と言い切れるかというと、協会の公表はそうなっていない。協会の巡業スケジュールを当サイトが年ごとに開くと、令和7年は秋が無く、令和4年の春には「中止となりました」と書かれている。

協会の巡業スケジュールに並ぶシーズン中止を除くシーズンの数並んでいる開催地の数
(2日間の会場も1と数える)
令和4年(2022)春(中止と明記)・夏・秋・冬319
令和5年(2023)春・夏・秋・冬469
令和6年(2024)春・夏・秋・冬476
令和7年(2025)春・夏・冬(秋のページが無い)371
令和8年(2026)春・夏・秋・冬491
日本相撲協会の各年の巡業スケジュールページ(schedule_2022〜schedule_2026)を2026年9月17日に当サイトが開いて数えた(開催地の数は当サイトが計算)。数え方=表の1行を1会場とし、2日間続ける会場も1と数えた(令和6年3件・令和7年2件・令和8年2件)。開催日で数えると令和6年79・令和7年73・令和8年93になる。会場ではないお知らせの行(令和6年の七尾場所 開催見送り)は除いた。令和8年の秋・冬は同日時点で予定として並んでいるもの。年の索引に令和3年のページは無く、協会は令和3年に「秋巡業および冬巡業中止について」を出している

シーズンの並びは本場所の合間に入る。令和8年なら三月場所の千秋楽が3月22日で、春巡業は3月29日の伊勢神宮奉納から始まっている(協会の年間日程表と巡業スケジュールを当サイトが突き合わせた)。次にどこで行われるかは年で変わるので、このページには日程を載せない。協会の巡業スケジュールが正本である。

どの地域を回るかも年ごとに動く。田口は2025年8月19日に「今年の夏巡業は24箇所まわる。東北・北海道は11箇所である。大阪・北陸・関東などがある」と書き、かつて夏巡業が東北・北海道中心だった頃を「札幌巡業ではビール園にいけばお相撲さんがいたものである。山稽古といってにわか土俵を体育館の外につくって稽古したものである」と振り返っている(夏巡業に思う)。同じ記事で田口は、猛暑で屋外の稽古が難しくなったことにも触れている。

巡業の楽しみ方|本場所では見られないもの

本場所と同じものを期待して行くと、巡業は物足りなく見えるかもしれない。逆に、本場所では見られないものを目当てにすると一日が長い。協会の時間割から拾えるのは次の3つである。

稽古。9時半頃から10時半頃まで、幕下以下から順に土俵に上がり、時間を追って関取の稽古になる。本場所の時間割に稽古の時間は無いので、稽古を客席から見られるのは巡業の側である。お好み。初切と相撲甚句は、協会が「本場所では見られない」と明記している催しである。近さ。会場は市町村の体育館やアリーナで、国技館より小さい。協会の巡業スケジュールには載らない奉納相撲だが、田口は靖国神社の相撲場について「会場は敷物の上に座った。ぎっしりである。外国人が目立つ。前が通路なので土俵が見えにくい」と書いていて、席の作りが会場ごとに違うことも分かる(47383)。

混み方も会場任せである。同じ記事の「8時25分に並んだが先頭ははるかかなたであった」は、開場が9時頃という協会の時間割と合わせて読むと、開場の30分以上前から列ができていたことを示している。早く着く前提で組んだほうがいい。

巡業についてよくある質問

Q. 巡業と本場所の違いは何ですか?
本場所は年6場所、初日から千秋楽まで15日間続き、星取表と番付が協会から公表されます。巡業は1会場1日が基本で(2日間の会場もあります)、朝の稽古が客席から見られ、初切や相撲甚句といったお好みが入ります。協会の星取表と過去の成績・番付は本場所ごとに作られていて、巡業の勝敗を載せた欄は当サイトが見た範囲ではありませんでした。

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Q. 巡業の1日のスケジュールは?
協会の「巡業の一日」では、9時頃に開場、9時半頃から10時半頃まで稽古、11時半頃から取組開始、13時頃に幕内土俵入りと横綱土俵入り、13時半頃から幕内取組、14時半頃に弓取式と打ち出しです。15時頃には次の巡業地へ向かいます。

Q. 巡業は年に何回ありますか?
春・夏・秋・冬のシーズンで組まれますが、毎年4つとは限りません。協会のスケジュールページでは令和7年に秋が無く、令和4年の春は中止と明記されています(2026年9月17日時点)。

Q. 巡業では稽古が見られますか?
見られます。協会の時間割では9時半頃から10時半頃で、幕下以下から始まり、時間を追って幕内・大関・横綱の稽古になります。

Q. 巡業の料金はいくらですか?
一律の額はありません。田口が書いているとおり巡業の主催者は勧進元で、協会のスケジュールにも開催地ごとに別の問い合わせ先が並んでいます。席種も値段もその土地で決まるため、当サイトでは金額を書きません。

Q. 巡業の取組は番付に関係しますか?
協会が公表する星取表と番付は本場所のもので、巡業の取組の勝敗は協会の成績ページに載りません。田口は元力士の「巡業の取組でケガして本場所を休むようなことがあると、本末転倒になります」という言葉を引いています。

Q. 巡業で横綱土俵入りは見られますか?
協会の時間割では13時頃です。本場所より3時間近く早い時間帯です。

Q. 今年の巡業はどこで行われますか?
開催地と日程は年ごとに入れ替わるので、協会の巡業スケジュールで確かめてください。このページでは日程を扱っていません。

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この記事を書いた人

少年漫画雑誌、日経関連の編集者を経て独立。現在は大相撲を専門に取材するライター。ほぼ毎場所、自ら土俵際で撮影している。にほんブログ村 相撲・大相撲カテゴリでランキング1位。

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