金星(きんぼし)とは、平幕(前頭)の力士が横綱を破ったときにつく勝ち星のこと。金星をあげると力士褒賞金の支給標準額が10円上がり、これが4000倍されて1場所あたり4万円の加算になる。歴代で最も多く金星をあげたのは、16個の安芸乃島である。
※定義・褒賞金の仕組み・歴代記録はWikipedia「金星(相撲)」(2026年1月場所時点)にもとづく。褒賞金の加算額は当サイトの記録とも一致する。
平幕の力士が横綱を土俵に沈めると、場内は座布団が舞い、大歓声に包まれる。この一番でついた勝ち星が金星である。ただの一勝ではない。番付の下の者が最高位を倒したという事実が、力士のその後の給金にまで残り続ける。この記事では、金星の正確な条件、褒賞金への加算の仕組み、歴代で金星を多くあげた力士、そして当サイトだけが追いかけている「配給する側」からの見方までを、出典にそって整理する。
金星とは|条件を正確に
金星は、平幕の力士が横綱と対戦して勝ったときにだけつく。ここでいう平幕とは前頭のことで、三役(小結・関脇)は含まない。だから小結や関脇が横綱を破っても金星にはならず、記録の上ではただの白星として扱われる。金星と呼べるのは、番付でいちばん下の幕内力士が最高位を倒した、その一勝に限られる。
いくつか例外もある。相手の休場による不戦勝や、反則による勝ちは金星に数えない。本割ではなく優勝決定戦で横綱に勝った場合も、金星にはならない。あくまで本割の取組で、実際に相手を破ったときの一勝である。なお、平幕が大関に勝つことを俗に「銀星」と呼ぶことがあるが、こちらは公式の記録として集計されず、給金にも関係しない。あくまで通称にすぎない。
金星を取るとどうなる|褒賞金への加算
金星の価値は、その場かぎりの拍手では終わらない。金星を1個あげると、力士褒賞金(持給金)の支給標準額が10円上がる。この10円は本場所ごとの支給額を計算するときに4000倍されるため、1場所あたり4万円の加算になる。年6場所あるので、金星1個につき年24万円が上乗せされる計算だ。
しかもこの加算は、その場所で負け越しても消えない。いちど手にした金星ぶんの昇給は、十両以上の地位にいる限り、引退するまで受け取り続けられる。一番の勝ちが、力士人生の終わりまで給金として残る。金星が「一生もの」と言われるゆえんである。仕組みを表にまとめた。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 加算のかたち | 力士褒賞金(持給金)の支給標準額が10円上がる |
| 1場所あたりの加算額 | 10円 × 4000 = 4万円 |
| 1年あたり(年6場所) | 4万円 × 6場所 = 24万円の計算 |
| 負け越したとき | その場所で負け越しても加算は消えない |
| 続く期間 | 十両以上にいる限り、引退まで |
力士のふところ全体でどのくらいの位置づけになるかは、力士の給料はいくら?や、取組ごとに動く相撲の懸賞金とはとあわせて見ると、金星の重みがより立体的に見えてくる。
歴代金星ランキング|最多は安芸乃島の16個
歴代で最も多くの金星をあげたのは、関脇として鳴らした安芸乃島の16個である。2位には高見山と栃乃洋が12個で並び、土佐ノ海の11個が続く。10個には北の洋・出羽錦・鶴ヶ嶺・安念山・巨砲の5人が名を連ねる。上位を占めるのは横綱の一歩手前で戦い続けた実力派ばかりで、金星の数は「上位陣をどれだけ食ったか」の記録でもある。
| 順位 | 力士 | 金星 |
|---|---|---|
| 1位 | 安芸乃島 | 16個 |
| 2位 | 高見山 | 12個 |
| 2位 | 栃乃洋 | 12個 |
| 4位 | 土佐ノ海 | 11個 |
| 5位 | 北の洋・出羽錦・鶴ヶ嶺・安念山・巨砲 | 各10個 |
首位の安芸乃島がどうやって16個を積み上げたのかは、当サイトが取組ごとにたどっている。千代の富士や北勝海といった昭和末から平成の横綱を次々に食った歩みは、強豪関脇安芸乃島を分析(上)と同(中)で場所ごとに追える。
「金星配給」という見方|横綱の側から数える
金星は、平幕にとっては勲章だが、横綱にとっては失点である。当サイトでは金星を「もらう側」だけでなく、横綱が「配給した側」から数え直している。これが金星配給という見方だ。何個の金星を平幕に許したか、平幕戦のうちどれだけの割合で取りこぼしたか。数字にすると、その横綱の強さと安定感がはっきり出る。
たとえば現役の両横綱は、豊昇龍と大の里の金星配給数で追っている。横綱7場所目で15個を配給している豊昇龍と、5場所で11個の大の里。おじの朝青龍が横綱7場所目までに8個だったのと比べると、いまの両横綱がいかに平幕に食われているかがわかる。さらに昭和初期までさかのぼった武蔵山・男女ノ川の金星配給率など、歴代横綱を「配給率」で並べる作業を一場所ずつ進めている。金星をもらった名場面だけでなく、与えた横綱の側から相撲を読む。ここは他では読めない切り口である。
名古屋場所2026の金星
名古屋場所は7月12日に初日を迎えた。初日、横綱大の里は義ノ富士に敗れて黒星スタートとなったが、これは金星ではない。義ノ富士は名古屋場所で新小結に昇進した三役力士であり、三役が横綱を破っても金星にはならないからだ。前の節で述べたとおりの実例が、初日にさっそく出たことになる。もう一人の横綱・豊昇龍は王鵬を退けており、初日に金星は生まれなかった。場所中に平幕が横綱を倒せば、この節に随時書き加えていく。
名古屋場所そのものの日程や見どころは、名古屋場所2026 完全ガイドにまとめてある。
よくある質問
金星はいくらもらえますか?
その場で受け取る一時金があるわけではありません。金星をあげると力士褒賞金(持給金)の支給標準額が10円上がり、これが4000倍されて1場所あたり4万円の加算になります。負け越しても消えず、十両以上にいる限り引退まで受け取り続けられます。
大関に勝っても金星ですか?
いいえ。金星は横綱を破ったときだけの記録です。平幕が大関に勝つことは俗に「銀星」と呼ばれますが、公式の記録には残らず、給金にも関係しません。
小結や関脇が横綱に勝ったら金星ですか?
なりません。金星がつくのは平幕(前頭)だけです。三役である小結・関脇が横綱を破っても、記録の上ではただの白星として扱われます。
歴代でいちばん金星が多い力士は誰ですか?
安芸乃島の16個です(2026年1月場所時点)。2位は高見山と栃乃洋の12個で、土佐ノ海の11個が続きます。
▶ あわせて読みたい:横綱の側から見た豊昇龍と大の里の金星配給数/番付別の月給は力士の給料はいくら?/取組ごとに動く相撲の懸賞金とは/進行の言葉は相撲の取組進行の用語まとめ