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相撲のバイブル わが回想の双葉山定次

双葉山といえばどんなイメージをもつだろう
か。片目でうちたてた69連勝、年2場所時代
に12回の最高優勝回数、相手が立てばいつ
でも立つ立ち合い、信念の人。69連勝は4分
の3世紀以上たった今でも破られていない。
後の先の立ち合いは誰もマネできない。双葉
山は最高の力士であり、力士の理想像である。
現代、双葉山を知る世代はほとんどいない。
それだけに双葉山を自分の目で見てきた方が
語り、残してくれた書物は非常に貴重なモノ
になる。筆者にとって相撲のバイブルという
べき本は小坂秀二著「わが回想の双葉山定次」
(読売新聞社刊)である。
双葉
<わが回想の双葉山定次 
小坂秀二著(読売新聞社刊)>
小坂氏といえば双葉山に傾倒し、相撲を見る
基準に双葉山においた方である。そして双葉
山の相撲を見たことが、自分の運命さえ変え
てしまった。歯科医から相撲アナウンサーに
転進しまったほどである。面接で志望動機を
聞かれ、「今までは人の口で食べてきました
が、これからは自分の口で食べていきたいと
思います」とユーモアに答えている。
小坂氏は「わが回想の双葉山定次」を書いた
動機を次のように記している。
双葉山と同時代に生き、双葉山の相撲を見ら
れたこと。戦後は親しく付き合いもできた
ことは、私にとって何よりの幸せであるが、
双葉山を通して相撲の真髄に触れたことだけ
はなんとしても書き残しておきたい。
双葉山の真価を伝え、相撲の真髄を伝えるに
力不足は否めないが、せめて私の感じたこと
だけでも書き残しておくことが務めではない
かと思う。
双葉山ブロマイド17
<双葉山のブロマイド>

双葉山の求めたものは、相手から得られる
勝利でもなく、まして観客の賞賛でもなかっ
た。また、単なる相撲技の習熟、完成という
ものでもなかった。言うなれば、相撲を通じ
ての自己完成への努力であろう。
道を求めるとか、相撲道を極めるとか言うと、
そこに突き詰めた求道者の姿を描きがちで
あるが、双葉山の日常、その土俵は真剣で
こそあれ、窮屈な束縛されたものではなかっ
た。あくまで明るく、闊達で、見る者はそれ
を楽しみ、かつ見終わると身の引き締まるの
を覚えるという感じのものであった。
双葉山自身は、そのようなことを語っていな
いが、彼が相撲を通じて、一個の人間として
の生き方を求めていたのは確かで、これから
双葉山をいろいろな角度から取り上げ、みな
さんの前に提供するが、私の意図することを
十分にお伝えすることができるかどうか危惧
するとともに、なんとか行間からそれを読み
取って下されば幸甚と思うのである。
いささか長い引用になったが、著者が言わん
とすることは伝わったと思う。この本は5つ
の章から成り立っている。またその中の興味
深い項目を併記してみる。
第一章 七十連勝成らざる日
    出羽海と立浪の確執
    われいまだ木鶏たり得ず
第二章 六十九連勝以前
    入門-栴檀は双葉より芳し
    当時の相撲界
第三章 六十九連勝
    運命のいたずら
第四章 六十九連勝以後
    信念の歯車が狂った
    円熟、悟達、そして…
第五章 双葉山のすべて
    その好敵手
    「道」を求め続けた人
双葉山ブロマイド9
<双葉山のブロマイド>

筆者には忘れられない思い出がある。双葉山
といえば二枚腰でも知られている。一つの腰
がくずれても、もう一つの腰が残す腰だと
いう。信じないわけではないが、どこかピン
とこなかった。だが、横綱玉の海が貴ノ花
相手にみせた腰はまさに二枚腰だった。二枚
腰がわかった喜びを小坂氏に手紙で送った
ことがあった。するとまさかの返事が来た
のである。玉の海の相撲は双葉山になりえる
という内容だった。まさに最高の1日に
なったことを覚えている。
筆者はこの本を通して、相撲はどうあるべき
か、力士のあるべき姿を学んだ。それは変わ
ることなく、今日まで続いている。まさに
バイブルにふさわしい一冊である。

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この記事を書いた人

無類の相撲好き。本場所は地方場所を含めて年間半分くらい観戦しています。大相撲に農閑期はなく、随時執筆していきます。興味深く読んでいただければ幸いです。お問い合わせなどあれば管理をお願いしてる masaguramさんまでX(Twitter)ください。

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