元琴櫻の佐渡ヶ嶽は平成17年十一月場所中に定年を迎えた。娘婿で
ある琴ノ若はその場で引退し、部屋を継承した。まだ現役でやれそ
うだったが、弟子の育成・部屋の経営に舵を切った。元琴櫻は定年
の約1年9カ月後に亡くなっている。元琴ノ若の佐渡ヶ嶽のもとで
先代の弟子である琴欧洲・琴光喜・琴奨菊を大関に育てた。
琴欧洲は大関で優勝がないのを気にしていた。他の3大関魁皇・千
代大海・琴光喜は優勝経験者だった。彼が優勝したのは平成20年五
月場所であった。横綱に朝青龍、白鵬がいてはなかなか難しかった。
このときは朝青龍・白鵬とも11勝4敗だった。

琴欧洲は朝青龍、白鵬を倒して初日から12連勝した。13日目は曲者
安美錦に1敗したが、関脇安馬(のちの日馬富士)、大関千代大海
に勝って14勝1敗で優勝した。琴欧洲が大関に昇進したとき、時代
を築くか、朝青龍の引き立て役で終わるのか、と提起した。答は後
者になった。その中で琴欧洲は大関15場所目で優勝した。
琴奨菊は大関になるとは思っていなかった。横綱朝青龍に勝ったと
き「やるなあ」くらいに思っていた。琴奨菊はワンチャンスを生か
して大関に昇進したのは入幕から41場所目であった。7年近くを要
した。

琴奨菊が優勝したのは平成28年一月場所であった。大関26場所目で
あった。3横綱4大関時代であった。優勝を争う日馬富士、白鵬に
勝って14勝1敗で優勝した。1敗は平幕の豊ノ島によるものであっ
た。琴奨菊の優勝は10年近く続いた外国人優勝にピリオドをうった。
元琴ノ若の佐渡ヶ嶽のもとで優勝した3人目の力士は息子琴櫻であ
る。一人横綱照ノ富士は休場。大関5場所目の2代目琴櫻と大関豊
昇龍は1敗の相星で千秋楽決戦となった。勝負は勇む豊昇龍が落ち
て負けた。決まり手ははたき込みだった。

佐渡ヶ嶽10人目の優勝者は去る七月場所優勝の琴勝峰であることは
すでに記した。次の優勝者はいつ誰が担うことになるのか。時間は
かかりそうである。
(終わり)