●品格の横綱昇進基準の適用は事実上不可能
大関が1場所優勝すると次の場所は綱取りがかかると
話題になる。この根拠となっているのが、横綱昇進規準
である2場所連続優勝を原則とするによるものである。
だが、その一文の前に品格力量抜群である、と書かれて
いる。本来ならこの一項目で十分である。2場所連続
優勝は品格力量抜群ではない。
それでは力量抜群とはどれくらいの力量か。あまりにも
神がかり的なことを言うつもりはない。常に優勝争いを
し、最低でも12勝をあげられる力である。しかし、品格が
抜群であることはほとんど審議されない。というより
審議のしようがないというのが、本当のところだと思う。
20代、30代の者に聖人君子を求めるのは無理があるし、
実際求めてはいない。土俵態度に問題がなければよしと
していいのでは。
ところが年月を経ると実に様々なケースが発生してきた。
双羽黒。付け人の脱走で始まったトラブルはやがて立浪
親方との対立を生み、おかみさんへの乱暴に広がった。
そのため前代未聞の現役馘首になった。
朝青龍。夏巡業を仮病で休んでモンゴルでサッカーを
やって2場所出場停止になった。これも前代未聞のことで
あった。これに留まらず、さらに暴行事件でかばいようが
なく事実上強制引退させられた。
それまではせいぜい北の湖が横綱になったとき元佐田の山
の出羽海が「北の湖は子供だなあ」となげいたくらい
だった。
いや、もっとすごい過去があった。1965(昭和40)年、
大鵬・柏戸がロサンゼルス巡業で拳銃を持ち帰った事件
である。今なら、そうとう重い処分になったことは間違い
ない。元双葉山の時津風理事長が休ませないと厳命したが、
両横綱とも9勝6敗と散々な成績に終わった。場所後
大鵬・柏戸は拳銃は隅田川に捨てたと証言したが見つから
なかった。両横綱は罰金3万円の略式起訴処分となった。
なお、当時の公務員の初任給は2万1600円の時代である。
こうした横綱が出てくるとは予想できなかったであろうし、
品格をはかる上で先のことは誰も読めない。したがって
品格が今後も横綱審議委員会で議論されることは難しさが
残る。