五月場所は鶴竜が横綱に昇進して横綱同士の対戦が一気に
3番に増えた。2002(平成14)年十一月場所から2007
(平成19)年五月場所まで及び2010(平成22)年三月場所
から2012(平成24)年九月場所まで横綱同士の対戦が
なかっただけに七月場所は優勝争いをしている横綱同士の
対戦をみたい。
力士同士の対戦成績は幕内通算で扱われることが多い。
しかし、実力差がある時期も含まれるため、同じ地位なら
どう変るのか。そこで横綱同士の対戦成績を調べてみた。
対象は横綱が実質地位化となった常陸山以降である。
本割だけでなく優勝優勝決定戦を含めた結果が下記である。
勝率は1勝と10勝1敗は1勝が上となるが、難しさは10勝
1敗のため、順位は勝敗差を採用した。
順位 横綱 横綱対戦成績 勝敗差 備考
1 大鵬 40勝21敗 ○19 優勝決定戦2勝1敗を含む 1不戦敗有
2 双葉山 15勝2敗 ○13 1不戦勝有
2 千代の富士 24勝11敗 ○13 優勝決定戦2勝を含む
4 羽黒山 19勝12敗 ○7 1不戦敗有
4 北の湖 38勝31敗 ○7 優勝決定戦1勝を含む 1不戦敗有
6 常ノ花 8勝2敗 ○6 1不戦勝有
6 東富士 16勝10敗 ○6 1不戦勝有
8 三重ノ海 8勝3敗 ○5
8 武蔵丸 10勝5敗 ○5
8 白鵬 14勝9敗 ○5 優勝決定戦2敗を含む 現役
11 初代若 乃花 11勝7敗 ○4 優勝決定戦1勝を含む
12 栃木山 3勝 ○3
12 隆の里 7勝4敗 ○3
14 大錦 2勝 ○2
14 吉葉山 10勝8敗 ○2
14 琴桜 5勝3敗 ○2 優勝決定戦1勝を含む
17 常陸山 2勝1敗5分 ○1
17 太刀山 1勝1分 ○1
17 北勝海 11勝10敗 ○1 優勝決定戦2敗を含む 不戦敗有
20 鏡里 16勝16敗 五分
20 貴乃花 16勝16敗 五分 優勝決定戦2勝1敗を含む
20 日馬富士 5勝5敗 五分 現役
23 2代目梅ヶ谷 1勝2敗4分 ●1
23 2代目西ノ海 1敗 ●1
23 3代目西ノ海 1敗 ●1
23 武蔵山 1勝2敗 ●1
23 照国 14勝15敗 ●1
23 千代の山 13勝14敗 ●1
23 北の富士 11勝12敗 ●1 優勝決定戦1敗を含む
23 旭富士 4勝5敗 ●1
23 3代目若乃花1勝2敗 ●1
32 玉錦 2勝4敗 ●2
32 柏戸 23勝25敗 ●2 優勝決定戦1勝1敗を含む
32 双羽黒 4勝6敗 ●2 優勝決定戦1敗を含む
32 鶴竜 2敗 ●2 現役
36 朝潮 2勝5敗 ●3
36 朝青龍 5勝8敗 ●3 優勝決定戦2勝を含む
38 鳳 4敗 ●4
38 前田山 4敗 ●4
38 栃錦 12勝16敗 ●4 優勝決定戦1敗を含む
38 玉の海 7勝11敗 ●4 優勝決定戦1勝1敗を含む
38 曙 12勝16敗 ●4 優勝決定戦1勝を含む
43 宮城山 2勝8敗 ●6 1不戦敗有
43 安芸ノ海 1勝7敗 ●6
43 栃ノ海 4勝10敗 ●6
46 佐田の山 11勝18敗 ●7 優勝決定戦1敗を含む 不戦勝有
46 2代目若乃花18勝25敗 ●7
48 男女ノ川 2勝10敗 ●8
48 大乃国 9勝17敗 ●8 優勝決定戦1勝を含む 不戦勝有
50 輪島 21勝33敗 ●12 優勝決定戦1敗を含む
明治37年春場所から大正期は取組が東西制ということと
横綱数がさほど多くなく9人(東京横綱のみ)、短命の
横綱もいたため、横綱同士の対戦数が少ない。23年間
46場所中
14取組しかない。太刀山は2代目梅ヶ谷と同じ
方屋で対戦はなく、常陸山と1分、2代目西ノ海に1勝と
横綱戦はわずか2戦しかない。
大錦、栃木山、常ノ花は同じ出羽海部屋のため対戦は
なく、横綱戦は大錦2勝、栃木山3勝ときわめて少ない。
常ノ花は1927(昭和2)年の東西合併によって大阪横綱の
宮城山との対戦が生じた。8勝2敗と圧倒。宮城山の
実力は小結程度といわれたが、横綱なので格下げする
わけにいかなかった。
<常ノ花の絵葉書部分>
昭和以降は横綱の数の増加、系統別総当り、部屋別総当り
が実施されるとともに場所数の増加、特に1958(昭和
33)年の年6場所によって横綱同士の対戦数が増加した。
横綱同士の対戦好成績者は大鵬、双葉山、千代の富士、
羽黒山、北の湖と大横綱が名を連ねている。大横綱は横綱
同士の対戦でも強いといえる。
大鵬は柏戸・栃ノ海・佐田の山・北の富士・玉の海と
5人の横綱と対戦しているが、負け越した横綱はいない。
特に柏戸戦は19勝9敗(優勝優勝決定戦1勝を含む)と圧勝
している。
<大鵬>
双葉山は玉錦・武蔵山・男女ノ川・安芸ノ海・照国と5
人の横綱と対戦している。照国戦の2勝2敗以外は全勝。
特に男女ノ川戦は7勝全勝とワンサイドだった。
<双葉山のブロマイド>
千代の富士は北の湖・2代目若乃花・隆の里・双羽黒・
北勝海・大乃国・旭富士と7人の横綱と対戦している。
同じ九重部屋の北勝海とは優勝決定戦で対戦している。
隆の里戦の3勝3敗の五分以外は勝ち越し。大乃国戦が
一番よく8勝2敗の対戦成績を残している。
意外な対戦成績が吉葉山対栃錦戦である。吉葉山の
6勝で、栃錦は横綱になって1度も吉葉山に勝って
いないのである。ライバル若乃花とは4勝7敗(優勝
決定戦の1敗を含む)と勝ちにくくなってきている。
<栃錦のブロマイド>
年6場所制で一番対戦数が少ないのが3代目若乃花で
ある。貴乃花と同部屋で対戦がなかったことと横綱として
短命だったこともあり、3戦しか対戦していない。曙戦
1勝1敗、武蔵丸戦1敗である。
意外な負け組みが朝青龍と輪島である。優勝回数は朝青龍が
25回(歴代4位)輪島が14回(歴代7位)と実績十分で
ある。朝青龍は横綱戦は白鵬のみでその成績が5勝8敗
(優勝決定戦の2勝を含む)である。輪島は最下位で
あるが、勝ち越したのは琴桜戦の2勝1敗のみで、北の
富士戦(2敗)、北の湖戦(14勝19敗=優勝決定戦1敗を
含む)、2代目若乃花戦(5勝8敗)、三重ノ海戦(0勝
3敗)を負け越している。
例外はあるが、強い横綱は横綱同士の一番にも強いと
いえる。
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