無気力相撲とは|意味と罰則、監察委員が動いた1972年の前の山対琴桜戦

無気力相撲とは、気力のない相撲、敢闘精神のない相撲のこと。ただし八百長が発覚した2011年には、協会が八百長と言わず「故意による無気力相撲」と表現したこともある。協会は無気力な相撲を見張る監察委員を、1971年(昭和46年)12月に設けた。

※1972年三月場所の大関同士の一番、前の山対琴桜戦では監察委員が両師匠を厳重注意したが、協会は無気力相撲と認めず罰則を適用しなかった。相撲記者の田口 通廣は、この一番を「事実上の無気力相撲」と呼んでいる。

目次

無気力相撲とは|協会が「故意による無気力相撲」と言った2011年

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無気力相撲というと、気力のない相撲、敢闘精神のない相撲を意味すると考えるのがふつうである。

しかし八百長が発覚した2011年、協会は八百長と言わず、故意による無気力相撲と表現していたこともあった。この年の八百長発覚と大量処分は八百長発覚と大量処分でふり返っている。

無気力相撲を見張る監察委員|1971年12月に誕生

田口がこの記事を書いた2014年の時点でも続いていた制度に、監察委員がある。杉山桂四郎氏は、監察委員を八百長Gメンと表現していた。

その誕生は、1971年(昭和46年)12月にさかのぼる。当時の報知新聞は、監察委員をこう説明している。

監察委員…八百長相撲、工作相撲、無気力相撲などの言葉で、無気力な相撲を指弾する世論にこたえて相撲協会が昨年(筆者注:1971(昭和46)年)十二月に設けた土俵の”目付け役”。(後略)

1972(昭和47)年3月25日付 報知新聞より

1972年三月場所の前の山対琴桜戦|カド番と勝ち越しを前にした大関同士

1972年(昭和47年)三月場所、監察委員によって高砂(元朝潮)と佐渡ヶ嶽(元琴錦)の両師匠が厳重注意を受けた一番がある。12日目に組まれた大関同士の取組、前の山対琴桜戦である。

前の山はこの場所カド番で、11日目まで5勝6敗とピンチだった。一方の琴桜は7勝4敗と、勝ち越しが可能なところまできていた。

当時はほかに清国と大麒麟がいて、大関は4人。優勝争いどころか1ケタ勝利が多く、大関互助会という言葉もとびかっていた。

ここでの琴桜は、翌年の昭和48年三月場所に第53代横綱となる琴櫻(佐渡ヶ嶽部屋)で、いまの琴櫻の祖父にあたる(日本相撲協会「歴代横綱」2026年9月27日確認/田口の祖父琴櫻のカド番超え横綱昇進)。

問題の一番|ふわっと立った琴桜、ほとんど無抵抗で転がる

ぶちかましを得意とする琴桜が、ふわっと立った。前の山はおざなりの突っ張りから双差しになり、寄り立てて下手投げで勝った。

琴桜はほとんど無抵抗で転がった。この一番に、監察委員は動かざるをえなかった。

監察委員の結論|立ち合いだけ気力が無かった

当時の監察委員は、委員長の花籠(元大ノ海)以下、三保ヶ関(元増位山)、高島(元三根山)、大山(元松登)、片男波(元玉乃海)、鏡山(元柏戸)の6人である。

監察委員がくだした結論は、相撲内容は悪くないが、立ち合いは2人とも気力が無かった、という不可解なものだった。田口は、相撲は立ち合いがすべてと言っている日ごろの発言と相反すると書いている。

ファンからは、無気力相撲ではないかという電話があった。相撲内容も無気力相撲と判定して少しもおかしくない、というのが識者のコメントであり、マスコミの論調だった。

だが協会は、無気力相撲を認めたくないために、立ち合いは無気力だが内容はそうでない、という形をとった。そのため罰則規定の除名・引退勧告・出場停止・減俸・けん責を適用しないという、田口のいう奇怪な判決になった。

その後|前の山は休場して大関から転落、琴桜は強行出場

勝った前の山は翌日から休場し、大関からの転落が決まった。これは監察委員の勧告ではなく、師匠の高砂(元朝潮)の権限によるものだった。もちろん、前の山はどこも負傷していない。

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琴桜は強行出場に踏み切った。意を汲み取ってくれなかった、という雰囲気があり、場所後に再処分かともいわれた。

無気力相撲を報じた当時の記事
<写真は無気力相撲を報じた記事>

田口がこの一番を取り上げた理由

田口はこの一番を「事実上の無気力相撲」と呼んでいる。2014年に42年前のこの一番を取り上げたのには、理由がある。

それは次のテーマ「八百長問題、その後」への布石で、考えなければならない重要な問題だからだという。続きは八百長問題、その後にある。

無気力相撲についてよくある質問

無気力相撲とは何ですか?

気力のない相撲、敢闘精神のない相撲を指す言葉です。八百長が発覚した2011年には、協会が八百長と言わず「故意による無気力相撲」と表現したこともありました。

無気力相撲と八百長は同じ意味ですか?

無気力相撲は、ふつうは気力のない相撲、敢闘精神のない相撲を指します。ただ、八百長が発覚した2011年には、協会が八百長を「故意による無気力相撲」と表現したことがあります。

監察委員とは何ですか?

無気力な相撲を指弾する世論にこたえて、協会が1971年(昭和46年)12月に設けた土俵の目付け役です。八百長Gメンと表現されたこともあります。

1972年の前の山対琴桜戦はどうなりましたか?

監察委員は両師匠を厳重注意しましたが、協会は立ち合いは無気力だが内容はそうでないという形をとり、罰則は適用されませんでした。勝った前の山は翌日から休場し、大関から転落しました。

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この記事を書いた人

少年漫画雑誌、日経関連の編集者を経て独立。現在は大相撲を専門に取材するライター。ほぼ毎場所、自ら土俵際で撮影している。にほんブログ村 相撲・大相撲カテゴリでランキング1位。

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