終盤戦、優勝争いは最高潮へと入っていく。まず、
1敗同士の玉鷲と北勝富士が激突した。北勝富士に
とっては上位好成績者との対戦2番目にあたる。玉鷲
は前日テレビのインタビューで、北勝富士には全勝で
いてほしかった、という趣旨の発言をしている。なん
たる自信の表れか。
相撲はその通りになった。北勝富士左前褌狙いも玉鷲
の突きがまさって取れない。玉鷲はそのまま突き離し
て西土俵に北勝富士を追い込み最後は押し出した。
「強い」その一言に尽きる玉鷲の相撲であった。北勝
富士は何もできなかった。完敗であった。
ところが12日目の玉鷲の相手は若元春である。これは
いささか解せない。玉鷲にはまだ小結霧馬山、翔猿、
翠富士、琴ノ若、宇良、高安の上位陣および優勝を
争う錦富士戦が残っている。若元春戦よりはるかに
優先される取組のはずである。単独トップに立ったら
なおさらである。
その前におこなわれた高安対妙義龍も同様である。
高安が対戦すべきは5勝5敗の妙義龍より優先すべき
取組があったはずである。貴景勝、若隆景、霧馬山、
翔猿、琴ノ若、玉鷲である。もっとも相撲は押し合い
けん制のなかから妙義龍がふところに入って下手投げ
で決めた。皮肉にも高安が思わぬ取組で敗れて3敗に
後退した。
優勝を争う者にはそれにふさわしい対戦相手が必要で
ある。時津山・玉乃海が平幕全勝優勝したことがあっ
た。だが、横綱・大関戦は一番もなかった。こんな
優勝のどこに価値があるのだろうか。優勝にはふさわ
しい対戦相手を。残りの日数は少ないので疑問符の
つく取組は御免蒙りたい。