大相撲

一代年寄隠れ蓑論

鏡里が朝日新聞記者に言質を取られ引退する
はめになったことは、「横綱その引退」で
書いてきた。その詳細はこうだ。横綱鏡里と
吉葉山は弱っていた。そうしたなか昭和32年
一月場所、吉葉山は場所中に引退した。鏡里
も取りこぼしが目立っていた。吉葉山が引退
すると、マスコミは鏡里のところへ殺到して
い った。

<鏡里のブロマイド>

「横綱として恥ずかしい成績しかあげられ
ないようなら覚悟はしている」と鏡里は話し
た。朝日新聞古参記者は「恥ずかしい成績
とはどういう成績か」と詰め寄った。「二
ケタの星があげられないときだ」と鏡里は
答えてしまった。結局その場所、鏡里は9勝
6敗で終わった。千秋楽は急遽鏡里の引退
会見になってしまった。鏡里は公約を守った
が、明らかにまだやれた、という思いがあり
ありだった。引退後「新聞記者は嫌いだ」と
口にしていた。

時は流れ、朝日新聞記者は定年になり、社会
事業の対ガン協会の事務長をやっていた。
そこで相撲協会に対して寄付を申しいれて
きた。ところが理事会で元鏡里の立田川が
がんとして反対した。絶対首を縦にふらなか
った。同席していた元栃錦の春日野が「人の
恨みは怖いものだね」と実感をこめて話して
いた。

<元栃錦の春日野>

なぜこうしたエピソードを綴ったかというと、
一代年寄りに直結する話だからである。仮に
協会内で白鵬の一代年寄を与えるのは反対で
あると提案し、理事会で賛成して可決された
とする。そうすると誰が発案者で、誰が賛成
者かはたちまち白鵬に伝わってしまう。そう
なるとその者たちは今後白鵬に恨まれ続け
られることになる。同じ組織内だけにやっ
かいになる。白鵬に同情する親方だって出て
くる。

<白鵬>

ところが、大相撲の継承発展を考える有識者
会議は一代年寄には横綱一代限りの特例で
継承できず、伝統の継承と矛盾する異形の
形と表現した。その根拠は公益財団法人に
なってから、一代年寄の根拠を見出せなかっ
たというなのだ。つまり、相撲協会が決めた
ことではなく、有識者会議の提言という形に
すれば、白鵬の恨みを受けずにすむという
図式になる。

いわばワンクッションおいた形を取り、有識
者会議を隠れ蓑にすれば問題はないことに
なる。有識者会議は一代年寄に関して一応
理詰めである。協会が新たに一代年寄の規定
をつくらない限り、白鵬の一代年寄りはない。
いや、今後もありえないことになる。

<元竹葉山の宮城野と白鵬(右)>

それにしても宮城野部屋はどうなるのだろう。
元竹葉山の宮城野の定年は2022年8月20日で
ある。再雇用で残るにしても部屋持ちには
なれない。そうなると誰に部屋を譲るのか。
あるいは閉鎖してほかの部屋に併合するのだ
ろうか。不明瞭ななかで白鵬の引退は迫って
いる。

雨の日です。
興味深いテーマをこれからもお届けします。

 

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  • この記事を書いた人

denkouriki

無類の相撲好き。きっかけは昭和42年、九重(元千代の山)が分家独立を許さない不文律の出羽海部屋から破門独立したことです。そのさい、千代の山を慕ってついていった大関北の富士がその直後の場所で初優勝した。こんな劇的なドラマを見せられたことが、大相撲から離れなくなりました。視点は監察委員を八百長Gメン、燃える要素があると強い北の富士を循環気質と呼んだ杉山桂四郎氏に。土俵の心は玉の海梅吉氏に、問題点を探るのは三宅充氏に、そして相撲の本質、真髄は小坂秀二氏に学んできました。本場所は地方場所を含めて年間半分くらい観戦しています。大相撲に農閑期はなく、随時執筆していきます。興味深く読んでいただければ幸いです。

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