去る三月場所、左の負傷をおして出場した
新横綱稀勢の里2敗。先頭を走るのは1敗
大関照ノ富士。負傷稀勢の里が照ノ富士を
本割・優勝決定戦と2番勝利するとは誰が
想像できただろうか。
<栃錦のブロマイド>
千秋楽の本割、優勝決定戦で逆転優勝した
ケースはほかにあるのだろうか。第1号は
土俵の鬼初代若乃花である。昭和34年五月
場所、横綱栃錦は初日から14連勝。横綱若乃
花は新横綱朝汐に13日目負けただけの1敗で
ある。栃錦はここまで8回優勝、若乃花は
5回優勝していた。
千秋楽、1差で追う若乃花は本割、優勝決定
戦で栃錦を2番破って優勝という劇的な幕切
れとなった。羽織紋付を用意していなかった
若乃花は弟弟子の若秩父とともにまわし姿で
オープンカーに乗り込んだ。裸の優勝パレー
ドといわれた。
<若乃花のブロマイド>
第2号は横綱大鵬である。昭和46年一月場所、
大鵬はすでに晩年であった。大関琴桜に負け
ただけの1敗。取り盛りで抜群の安定感が
ある横綱玉の海は初日から14連勝。しかも
2連覇中であった。玉の海が2番続けて負け
ることは考えられえなかった。
大鵬は「明日(千秋楽)は2番ともわしが
勝つ」と宣言していた。本割はあっさり、
大鵬がもろ差しで勝った。優勝決定戦は、
水入りとなったが、玉の海は終始上手が取れ
ず、攻め手を欠いていた。かくして大鵬が
優勝決定戦も制して、逆転優勝した。この
優勝で「おそるべき大鵬の執念」とまでいわ
れた。
<玉の海>
しかし、後日談があってこの一番は八百長
だったということが判明した。玉の海はその
四股名を玉の海梅吉氏から譲り受けるにあた
って、けして八百長はやらないという条件付
だったが、大先輩の圧力に痛恨の二番を取ら
されてしまった。
<大鵬>
このケースの場合は、厳密には逆転優勝に
あてはまらないのかもしれない。
星取表を購入。
興味深いテーマをこれからもお届けます。
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