けたぐり(蹴手繰り)は、立ち合いの瞬間に相手の足を内側からけり、同時に腕をたぐって引き倒す奇襲技である。正面から当たっても勝てない相手に有効な一方、失敗すると体勢を崩して一気に持っていかれる危うさもある。海乃山や藤ノ川豪人といった名手が決め技にした技だが、力士の重量化が進んだ現在は幕内で姿を消し、2017年五月場所を最後に決まっていない。
※名前の似た「蹴返し(けかえし)」は別の決まり手である。本記事は実際の取組を見てきた田口が、けたぐりの仕組みと歴代の名手をまとめたものである。
けたぐりとは|立ち合いの奇襲技
けたぐりは、立ち合いの一瞬に相手の足をけり、腕をたぐる奇襲技である。どうやっても正面からでは勝てない相手に効果的な技だ。ただし、相手に圧力をかけて攻める技ではないため、失敗すると一気に持っていかれる恐れがある。決まれば鮮やかだが、賭けの要素が大きい技でもある。
重量級の大相撲になり、うっちゃりやつり出しが消えたと言われて久しい。それでも幕内ではどうにか見られ、栃ノ心がつり出しをたまに見せ、若元春がうっちゃりを決めることもある。だが、この二つ以上に見なくなったのが、けたぐりである。なお、名前のよく似た「蹴返し(けかえし)」は、相手の足首を内側から蹴って倒す別の決まり手で、けたぐりとは区別される。

けたぐりの名手たち
栃錦は、およそ繰り出さなかった技がないほどの業師だった。けたぐりも3度出している。横綱東富士には3回まともにいって玉砕したが、これは布石であった。4回目の対戦で「栃錦はまともにくるな」と思わせておいて、けたぐりを決めている。技を勝負の流れのなかで使う、その駆け引きが光った。

けたぐり名人といえば海乃山である。幕内で25度も決めた。けたぐりで横綱大鵬に2度勝ち、2度目には殊勲賞を獲得している。大関北の富士には3度勝ち、大関琴櫻にも勝っている。横綱・大関を奇襲で倒し続けた、まさにけたぐりの代名詞だった。

「今牛若」と異名をとった藤ノ川豪人も、けたぐりの名手だった。幕内で22度決め、横綱北の富士、大関琴櫻を倒している。ほかに二子岳が幕内で23度はなっている。比較的新しいところでは、時天空が17度決めた。いずれも、ただの奇襲ではなく決め技として磨いた力士たちである。
| 力士 | 幕内で決めた数 | 主な殊勲 |
|---|---|---|
| 海乃山 | 25回 | 横綱大鵬に2勝(2度目は殊勲賞)、大関北の富士・琴櫻も破る |
| 二子岳 | 23回 | — |
| 藤ノ川豪人 | 22回 | 横綱北の富士、大関琴櫻を破る |
| 時天空 | 17回 | 比較的新しい時代の名手 |
| 栃錦 | 3回 | 4度目の対戦で横綱東富士を破る布石とした |
なぜけたぐりは見られなくなったのか
横綱朝青龍が小結稀勢の里にけたぐりで勝ったことがある。このときは「横綱が使う技ではない」と批判を浴びた。正面から受けて勝つことを求められる横綱が奇襲に頼ったと見られたためである。幕内の取組では、2017年五月場所で荒鷲が豪風に決めたのが最後で、当分は幕内で見られない技になりそうである。力士の重量化が進み、立ち合いから当たって攻める相撲が主流になったことが、けたぐりを遠ざけている。

けたぐりについてよくある質問
けたぐりとはどんな技ですか?
立ち合いの瞬間に相手の足をけり、同時に腕をたぐって引き倒す奇襲技です。正面から当たっても勝てない相手に有効ですが、攻めの圧力がない技のため、失敗すると一気に持っていかれるリスクがあります。
けたぐりと蹴返しは違うのですか?
別の決まり手です。けたぐり(蹴手繰り)は立ち合いに相手の足をけって腕をたぐる奇襲技、蹴返し(けかえし)は相手の足首を内側から蹴って倒す技です。名前が似ているため混同されやすいですが、技の形が異なります。
なぜけたぐりは最近見られないのですか?
力士の重量化が進み、立ち合いから当たって攻める相撲が主流になったためです。けたぐりは失敗時のリスクが大きく、幕内では2017年五月場所を最後に決まっていません。
横綱がけたぐりを使うと批判されるのはなぜですか?
横綱は正面から相手を受けて勝つことが求められるためです。朝青龍が小結稀勢の里にけたぐりで勝った際は、横綱が使う技ではないと批判を浴びました。
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