横綱昇進の条件とは|横審の内規と綱取り、歴代32人の昇進前5場所の成績

横綱昇進の条件は、横綱審議委員会の内規が定める「大関で2場所連続優勝」が原則で、それに準ずる成績なら出席委員の3分の2以上の決議で推薦できる。大関がこの昇進をねらうことを綱取りと呼ぶ。千代の山から稀勢の里までの32人を昇進直前5場所の成績で並べると、2場所連続優勝で上がったのは12人だった。

内規の文言は、田口が2020年の記事(横綱審議委員会のあり方)に書き写したものと、日本大百科全書の説明による。綱取りの語義はデジタル大辞泉による。昇進前の成績表は田口が作成したものを一覧化した(◎はその場所の優勝)。所要場所数は新入幕から横綱昇進まで何場所か、昇進年齢は横綱の昇進年齢へ。

目次

横綱昇進の条件|横審の内規と綱取り

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横綱審議委員会の内規は、横綱に推薦する力士について次のように定めている(田口が2020年の記事横綱審議委員会のあり方に書き写した文言)。

  • 横綱に推薦する力士は品格、力量が抜群であること
  • 今後の横綱推薦に対しては、横綱審議委員会が、大関で二場所連続優勝した力士を横綱に推薦することを原則とする
  • 第二項に準ずる成績をあげた力士を推薦する場合は、全委員の一致の決議を必要とする。(後3分の2に変更)

準ずる成績の力士を推薦するときの決議は、日本大百科全書の説明では出席委員の3分の2以上の賛成である。

大関が横綱の地位をねらうことを「綱取り」と呼ぶ。デジタル大辞泉も、昇進には一般に二場所連続優勝かそれに準じる成績が条件だと説明している。

田口は、この2場所連続優勝の原則を横綱審議委員がつくったものと書き、それが昇進の基準として浸透していると見ている。

2場所連続優勝という基準の危うさ|田口の見方

2023年一月場所で優勝した貴景勝
<一月場所の優勝者貴景勝>

田口がこの検証を書いたのは2023年1月、一月場所で貴景勝が12勝で優勝し、三月場所は横綱をかける場所だという声があがっていたときである。田口は、2場所連続優勝という基準には次の危うさが潜んでいると書いた。

  • 年6場所の時代に、わずか2場所という短い期間で決まる
  • 優勝といっても、15戦全勝の優勝と12勝3敗の優勝は同一視できない
  • 一時の勢いだけで決めてしまう

横綱は数字よりも、どこから見ても万全で、十分に横綱が務まるとなって初めて昇進できるものだ、と田口は書く。そこまでいかないうちに昇進したため、横綱として不十分な横綱がずいぶん誕生した、というのが田口の見方である。

その貴景勝の名は、協会公式の「歴代横綱」に無い。横綱には上がらなかった。

昇進直前5場所の成績|千代の山〜稀勢の里の32人

年6場所の時代は5場所くらいをみたほうがいい、と言ったのはNHK解説者だった玉の海梅吉氏である。その5場所で、田口が横綱審議委員会の誕生後、千代の山以降の横綱の昇進前を調べた。

直前5場所の成績がもっとも良かったのは貴乃花の66勝9敗。2場所前と直前がともに優勝だったのは32人中12人である。

横綱5場所前4場所前3場所前2場所前直前合計
千代の山◎12勝3敗9勝6敗11勝4敗8勝7敗◎14勝1敗54勝21敗
鏡里12勝3敗11勝4敗11勝4敗12勝3敗◎14勝1敗60勝15敗
吉葉山6勝3敗6休10勝5敗14勝1敗11勝4敗◎15勝0敗56勝13敗6休
栃錦8勝7敗9勝6敗9勝6敗◎14勝1敗◎14勝1敗54勝21敗
初代若乃花10勝5敗11勝4敗11勝4敗12勝3敗◎13勝2敗57勝18敗
朝潮10勝5敗11勝4敗◎14勝1敗11勝4敗13勝2敗59勝16敗
大鵬10勝5敗12勝3敗11勝4敗◎13勝2敗◎12勝3敗58勝17敗
柏戸◎13勝2敗12勝3敗10勝5敗11勝4敗12勝3敗58勝17敗
栃ノ海10勝5敗8勝7敗11勝4敗◎14勝1敗13勝2敗56勝19敗
佐田の山11勝4敗8勝7敗13勝2敗13勝2敗◎13勝2敗58勝17敗
系統別総当たりの時代(10人)。佐田の山のみ、系統別総当たり4場所・部屋別総当たり1場所。◎は優勝。出典=田口 通廣 作成の成績表
横綱5場所前4場所前3場所前2場所前直前合計
北の富士9勝6敗9勝6敗12勝3敗◎13勝2敗◎13勝2敗56勝19敗
玉の海8勝7敗9勝6敗◎13勝2敗10勝5敗13勝2敗53勝22敗
琴桜1勝2敗12休8勝7敗9勝6敗◎14勝1敗◎14勝1敗46勝17敗12休
輪島13勝2敗11勝4敗11勝4敗13勝2敗◎15勝0敗63勝12敗
北の湖10勝5敗◎14勝1敗10勝5敗◎13勝2敗13勝2敗60勝15敗
2代目若乃花10勝5敗10勝5敗13勝2敗13勝2敗14勝1敗60勝15敗
三重ノ海10勝5敗11勝4敗10勝5敗13勝2敗14勝1敗58勝17敗
千代の富士11勝4敗◎14勝1敗11勝4敗13勝2敗◎14勝1敗63勝12敗
隆の里10勝5敗8勝7敗12勝3敗13勝2敗◎14勝1敗60勝15敗(※)
双羽黒12勝3敗10勝5敗10勝5敗12勝3敗14勝1敗58勝17敗
北勝海12勝3敗8勝7敗11勝4敗◎12勝3敗13勝2敗56勝19敗
大乃国9勝6敗9勝6敗◎15勝0敗12勝3敗13勝2敗58勝17敗
旭富士8勝7敗9勝6敗8勝7敗◎14勝1敗◎14勝1敗53勝22敗
曙◎13勝2敗全休9勝6敗◎14勝1敗◎13勝2敗49勝11敗15休
貴乃花11勝4敗◎14勝1敗11勝4敗◎15勝0敗◎15勝0敗66勝9敗
3代目若乃花12勝3敗10勝5敗10勝5敗◎14勝1敗◎12勝3敗58勝17敗
武蔵丸11勝4敗11勝4敗8勝7敗◎13勝2敗◎13勝2敗56勝19敗
朝青龍11勝4敗12勝3敗10勝5敗◎14勝1敗◎14勝1敗61勝14敗
白鵬8勝7敗全休10勝5敗◎13勝2敗◎15勝0敗46勝14敗15休
日馬富士11勝4敗11勝4敗8勝7敗◎15勝0敗◎15勝0敗60勝15敗
鶴竜10勝5敗9勝6敗9勝6敗14勝1敗◎14勝1敗56勝19敗
稀勢の里13勝2敗12勝3敗10勝5敗12勝3敗◎14勝1敗61勝14敗
部屋別総当たりの時代(22人)。輪島は5場所前は関脇、北の湖は4・5場所前は関脇、千代の富士は4・5場所前は関脇、双羽黒は5場所前は関脇、曙は5場所前は関脇、朝青龍は4・5場所前は関脇。◎は優勝。出典=田口 通廣 作成の成績表

表は田口作成の画像2枚(下)を1行ずつ文字に起こした。各行の5場所の勝ち・負け・休みを足して合計欄と一致するかで確かめ、32人のうち31人は一致した。隆の里の行だけは5場所を足すと57勝18敗、原典の合計欄は60勝15敗で、どちらが正しいか決める材料がないため原典のまま載せて(※)を付けた。

横綱昇進直前5場所の成績(千代の山〜佐田の山・田口作成)
横綱昇進直前5場所の成績(北の富士〜稀勢の里・田口作成)

2場所連続優勝で昇進したのは12人

上の表で、2場所前と直前の両方に◎が付いているのは栃錦・大鵬・北の富士・琴桜・旭富士・曙・貴乃花・3代目若乃花・武蔵丸・朝青龍・白鵬・日馬富士の12人。32人の半分に届かない。数えたのは当サイトで、協会が公表している区分ではない。

逆に、直前5場所のなかに優勝が1度もないのは2代目若乃花・三重ノ海・双羽黒の3人である。これは5場所のなかに優勝がないという意味で、田口によれば、優勝の経験がないまま横綱になったのは双羽黒である。

優勝1回で横綱になった力士|鏡里・吉葉山・柏戸ら

鏡里は5場所で60勝だから、合格のように見える。実は横綱直前の優勝が初優勝で、優勝経験1回で横綱になった。鏡里は年3場所から4場所のころの成績である。

鏡里のブロマイド
<鏡里のブロマイド>

初優勝だけで横綱になった力士は、ほかに吉葉山・柏戸・2代目若乃花・三重ノ海・大乃国・鶴竜・稀勢の里と意外に多い、と田口は書く。双羽黒にいたっては、優勝なしで横綱になった。

昇進のしかた該当する横綱
優勝の経験がないまま昇進双羽黒
初優勝(優勝1回)で昇進鏡里・吉葉山・柏戸・2代目若乃花・三重ノ海・大乃国・鶴竜・稀勢の里
連続優勝ではなく紛糾したすえ昇進初代若乃花
連続優勝が絶対視され、昇進が遅れた旭富士・貴乃花
昇進のしかたで分けた顔ぶれ(田口の本文の記述による)

千代の山は昇進2場所前が8勝7敗で、現代なら考えられない。田口が思いあたる理由は、千代の山が新大関から13勝、12勝で2場所連続優勝した実績を持っていたことだ。千代の山のころは年3場所だった。

千代の山のブロマイド
<千代の山のブロマイド>

連続優勝の原則をめぐって|初代若乃花・貴乃花・旭富士

初代若乃花のときは紛糾して、なかなか決まらなかった。若乃花は大関時代から横綱にひけをとらず強かったが、連続優勝ではなかった。横綱審議委員がつくった2場所連続優勝の原則を自らくずすのかと、舟橋聖一氏が頑として受け付けなかった。

結局、若乃花は横綱に昇進した。責任感の強い若乃花は、それまで以上に稽古した。

初代若乃花のブロマイド
<若乃花のブロマイド>

昇進直前5場所の最高成績は貴乃花である。横綱は時間の問題といわれるほどだったが、連続優勝が絶対の時代で、なかなかなれなかった。最後は連続全勝優勝で決めた。

貴乃花
<貴乃花>

優勝なしの双羽黒を横綱にした反動からか、旭富士から日馬富士までは2場所連続優勝しなければ横綱になれなかった、と田口は見ている。割をくったのは旭富士と貴乃花だった。3代目若乃花は2場所連続優勝で昇進したが、横綱優勝はついになかった。

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表に入っていない横綱|照ノ富士・豊昇龍・大の里

田口の表は稀勢の里までの32人で、第73代照ノ富士は入っていない。その後に第74代豊昇龍、第75代大の里が昇進した。3人の直前2場所を協会公式の記録と報道で並べると、2場所連続優勝で上がったのは大の里で、照ノ富士と豊昇龍は2場所のうち優勝が1回だった。

横綱新横綱の場所2場所前直前
照ノ富士(第73代)令和3年九月場所◎12勝3敗(令和3年五月)14勝1敗(令和3年七月)
豊昇龍(第74代)令和7年三月場所13勝2敗(令和6年十一月)◎12勝3敗(令和7年一月)
大の里(第75代)令和7年七月場所◎12勝3敗(令和7年三月)◎14勝1敗(令和7年五月)
いずれも大関での成績。◎は優勝。新横綱の場所=日本相撲協会公式「歴代横綱」の各横綱のページ(2026年9月26日確認)。成績と優勝=豊昇龍・大の里は協会公式「力士プロフィール」(同日確認)、照ノ富士は協会公式「過去の成績(大帳)」(2026年9月20日取得)。照ノ富士の令和3年五月場所の優勝は協会公式「各段の優勝力士・三賞力士」(2026年9月13日取得)とBBMスポーツの報道(2021年5月23日)による

横綱昇進の条件についてよくある質問

Q. 横綱昇進の条件は何ですか?
横綱審議委員会の内規は、大関で2場所連続優勝した力士を横綱に推薦することを原則とし、それに準ずる成績の力士を推薦するときは出席委員の3分の2以上の決議が要ります(田口の書き写しと日本大百科全書)。品格、力量が抜群であることも内規にあります。

Q. 綱取りとは何ですか?
大関が横綱の地位をねらうことです(デジタル大辞泉)。昇進には一般に2場所連続優勝かそれに準じる成績が条件とされます。

Q. 2場所連続優勝で横綱になった力士は何人いますか?
千代の山から稀勢の里までの32人では12人です(昇進直前の2場所がともに優勝)。表に入っていない3人のうち、大の里も2場所連続優勝で昇進しました。

Q. 優勝なし・優勝1回で横綱になった力士はいますか?
優勝なしで昇進したのは双羽黒です。初優勝(優勝1回)で昇進したのは鏡里をはじめ、吉葉山・柏戸・2代目若乃花・三重ノ海・大乃国・鶴竜・稀勢の里がいます。

Q. 最も新しく横綱に昇進したのは誰ですか?
2026年9月時点では第75代の大の里です。新横綱の場所は令和7年七月場所でした(協会公式「歴代横綱」、2026年9月26日確認)。

▶ 横綱データ:代位の順に全員並べた一覧は歴代横綱一覧|初代明石から第75代大の里まで全75人 | 昇進までの所要場所数は新入幕から横綱昇進まで何場所か | 昇進年齢・引退年齢は横綱の昇進年齢と引退年齢 | 優勝から遠ざかった記録は横綱で優勝なしの記録

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この記事を書いた人

少年漫画雑誌、日経関連の編集者を経て独立。現在は大相撲を専門に取材するライター。ほぼ毎場所、自ら土俵際で撮影している。にほんブログ村 相撲・大相撲カテゴリでランキング1位。

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