七月場所は新型コロナウイルスで部屋ごと休場が多発
した。場所は揺れに揺れた。不戦勝のオンパレードと
なった。開催は大丈夫なのかというところまで追い
詰められた。そんななか前頭上位の逸ノ城が初優勝
して幕を閉じた。成績は12勝3敗であった。逸ノ城は
過去13勝、14勝をあげたことがある。そのときは優勝
できなかったから摩訶不思議である。
13勝は新入幕のときであった。2014年九月場所、逸ノ
城旋風が吹きあれた。前頭10枚目で初日から快調に
白星を積み重ねていった。7日目は勢に1敗したもの
の、その後も勝ち続けた。11日目大関稀勢の里と対戦
した。これをはたき込みで突破すると12日目は大関
豪栄道戦を組まれた。これをパワーで圧倒した。
12日目、ついに2敗横綱鶴竜と対戦することになっ
た。新入幕が横綱と対戦する、ということで俄然注目
を集めた。鶴竜に気負いがあったのか、逸ノ城は左に
動いてはたき込んだ。新入幕が横綱戦勝利というめっ
たにない偉業を成し遂げた。14日目ついに1敗同士で
横綱白鵬と激突した。白鵬の上手投げに屈したが、
堂々の13勝をあげ、殊勲賞と敢闘賞を受賞した。
逸ノ城の摩訶不思議は2019年三月場所に訪れた。逸ノ
城は前頭西4枚目であった。横綱・大関とは半枚違い
で対戦圏外であった。逸ノ城は初日から連戦連勝。
7日目大関栃ノ心と対戦した。これは東3枚目に同
部屋栃煌山がいたためであった。逸ノ城は1敗した
が、翌日の大関豪栄道戦は勝利した。これも西2枚目
に同部屋の妙義龍がいたために組まれたわけである。
ところがこの後いっさい横綱・大関戦がなかったので
ある。特に白鵬は全勝で優勝を争う力士である。つい
に最後まで組まれず、白鵬が15戦全勝で優勝。逸ノ城
は大関2番だけの14勝1敗となった。今なら考えられ
ない不手際である。
2014年五月場所、逸ノ城は新十両の場所11勝4敗で
優勝している。ところが翌場所13勝2敗をあげながら
優勝決定戦で敗れ、逃している。優勝決定戦を制した
のは栃ノ心である。栃ノ心はケガのため全休で番付を
幕下まで下げていた。幕下で連続優勝して十両に戻っ
てきた。そして、逸ノ城に優勝決定戦で勝って、優勝
したのである。11勝で十両優勝し、13勝で逃す。逸ノ
城はやはり摩訶不思議な力士である。