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一代年寄は偉業から異形の資格へ

約2年間、11回に渡り開催されてきた大相撲
の継承発展を考える有識者会議が、提言書を
相撲協会に提出した。大相撲の継承発展を
考える有識者会議とは、大相撲の国際化や
問題点とともに2019年に設置された諮問機関
である。メンバーは東大名誉教授の山内委員
長をはじめ、8名で構成されている。相撲通
で女優の紺野美紗子女史もメンバーの一人で
ある。

その大相撲の継承発展を考える有識者会議が
提言をしたなかに、ショッキングな項目が
あった。一代年寄は横綱一代限りの特例で
継承できず、伝統の継承と矛盾する異形の形
とまで表現した。その根拠は公益財団法人に
なってから、一代年寄の根拠は見出せなかっ
たというのだ。といっても廃止ではなく、
制度そのものがなかったと山内委員長は説明
している。

<日刊スポーツの記事>

横綱一代年寄制度は昭和16年春場所前に新設
された。相撲界に貢献があった横綱に限り
一代年寄を認め、功労に報いるべき、という
のが趣旨であった。その背景には横綱男女ノ
川が、引退がそう遠くないなか、年寄株が
なかったことがあった。この制度で双葉山が
とりあえず 双葉山相撲道場として独立した。
なお、双葉山は大阪株であった時津風入手の
メドはたっていた。男女ノ川は昭和 20年
6月、廃業している。

この制度は昭和34年9月に廃止された。横綱
は5年間年寄株なしでも年寄として残れる
特例はこのときできた。現在鶴竜は年寄鶴竜
として協会に残っている。日本国籍を有する
者の条件付きである。

<白鵬>

一代年寄はその後昭和44年五月場所、大鵬の
30回目の優勝の偉業をたたえて、協会から
贈られた。九月場所の初日、武蔵川理事長
(元出羽ノ花)以下協会幹部が土俵に上がり、
紋服姿の大鵬を表彰した。大変壮観であった。
一代年寄を贈られたことで、大鵬は将来大鵬
部屋をおこし、ニ所ノ関部屋から独立する
ことが規定路線になっていた。そのため、
現役のときから弟子を集め、内弟子にして
いた。

<大鵬>

なお、一代年寄は功労金代わりの意味合いが
含まれているという見方があった。

一代年寄はその後、北の湖が2人目となった。
北の湖は「名誉なこと」として受け入れた。
北の湖は部屋の出世頭ではあったが、所属
していた三保ヶ関(元増位山)部屋は息子の
増位山が継ぐことが決定的であった。その
ため、北の湖の独立は必至であった。

<北の湖>

3人目の一代年寄は千代の富士になる予定
だった。だが、九重部屋を継ぐため、辞退
した。千代の富士が一代年寄を受諾していれ
ば、引退後一人助かったのに、とぼやく声が
あったとか。3人目は貴乃花である。一代
年寄は20回以上の優勝が目安という見方が
されていた。父の二子山部屋の看板が貴乃花
部屋に変わった。だが、貴乃花は親方の途中
で弟子を残し、自ら協会を離職していった。

<貴乃花>

問題は、白鵬がこのままでは一代年寄を受け
られなくなることである。協会が一代年寄の
根拠を新たに示さなければ、大相撲の継承
発展を考える有識者会議をそのまま受け入れ
ることになる。その場合、白鵬に功労金大増
加で報いるしかないことになる。白鵬の引退
は迫っている。また、白鵬が一代年寄なしの
場合、今後偉業達成の横綱が現れたら同様の
方向で対応するしかないことになる。

<八角(元北勝海)理事長>

それにしても公益財団法人になったとき、
年寄株の売買は禁止したはず。だが、顧問料・
指導料の名目で実質上売買と変わらず年寄株
が高値取引されている。そうした実態に有識
者会議が触れていないのは意外であった。

ワクチンの遅れが気になります。
興味深いテーマをこれからもお届けします。

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この記事を書いた人

無類の相撲好き。本場所は地方場所を含めて年間半分くらい観戦しています。大相撲に農閑期はなく、随時執筆していきます。興味深く読んでいただければ幸いです。お問い合わせなどあれば管理をお願いしてる masaguramさんまでX(Twitter)ください。

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