専門誌「大相撲」が不人気を脱し、興隆を
迎えるためには、本場所の土俵をもっと充実
させることであることが第一である、と記述
している。現代の理事長も土俵の充実をスロ
ーガンにしている。大相撲を面白くする方法
は内容のある相撲といえる。
昭和天皇は相撲好きであり、しばし天覧相撲
がおこなわれていた。その日の相撲は白熱し、
活気に満ちていたと、評論家やメディアは
発言している。常に天覧相撲のような精神で
取れればいいのだが、そうはいかない現状が
あった。「大相撲」は指摘する。ただ、懸命
やるだけでは、アマチュアと変わりがない。
そこに、プロらしい実力がともなってこそ、
観客は喜び、いっそうの拍手を惜しまない
ことになる。

<専門誌大相撲の特集記事>
そして手に汗をにぎる熱戦が少ない原因を
こう分析している。まず、力士の収入が安定
して力士のサラリーマン化につながっている
ことをあげている。そのためにも枚数ごとに
月給に差をつけろと提言している。そうで
ないと上がることより現状を守ろうとする。
しかし、枚数ごとに月給に差をつける制度は
未だに実現していない。
また無気力相撲という名の八百長と思われる
相撲が横行しており、これでは熱戦からほど
遠くなる、とも述べている。そのためにも、
同系統の取組は中日前に実施し、後半は幕内
下位対十両上位、十両下位対幕下上位の対戦
をどんどん増やすことである。ただ、協会は、
八百長がない建て前であるだけに、前記の
ようなことはおこなわれるはずがなかった。
これでは土俵の充実は遠ざかる一方になる。
ちなみに現代は八百長的行為をおこなわない
よう各力士に誓約書を提出させている。
内容ある相撲の裏づけとなるのが、稽古で
ある。大合併の巡業ではどうしても稽古量に
限界がでてくる。6場所制がそのままで稽古
量を増やすのなら大合併巡業をやめること
が第一条件になる、と「大相撲」は指摘する。
そのかわり、一門巡業、あるいはキャンプ、
部屋稽古にすべきと主張している。大合併の
巡業は現代も変わらない仕組みである。

<玉の海氏の著書>
厳しい評論でなる天竜・玉の海両氏は次の
ように意見している。「現在の相撲は、見物
人に、これはという興奮を与えていない。
攻めて攻め返す相撲の醍醐味を、観衆に味わ
わせていない。けいこ場へ行っても、シコや
テッポウなど、幕内力士のやっているのを
見ても型になっていない。仕切りで手はつか
ぬ、ぶつかりけいこはへたくそ。これでは
おもしろい相撲は生まれようがない。すべて
はけいこ量と真剣味にかかっていると思う」
と厳しい。両氏が現代の吊り出しとうっちゃ
りがほとんど消失した相撲を見たら果たして
何と言うか。土俵の充実は容易なことでは
ないことがわかる。
(この項目終わり)
逆説の日本史を読んでいます。
興味深いテーマをこれからもお届けします。
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