大相撲

昭和・平成の10大ニュース5 九重部屋破門独立

2015年11月17日

出羽海部屋を大部屋にしたのは明治の角聖常陸山である。
元出羽ノ海の常陸山亡き後、出羽海を継いだのは元両国
(前名国岩)である(ここから出羽ノ海の「ノ」の字は
なくなる)。出羽海が分家独立を許さずという不文律が
できたのは元両国(前名国岩)の出羽海の代からである。

分家独立を許さずの出羽海で、九重が独立へと動く最初
のきっかけは元常ノ花の出羽海の突然の死だった。跡目
争いで元出羽ノ花の武蔵川と元横綱千代の山の九重が争
い、武蔵川が支持を集めて出羽海になった。出羽海と九
重は17歳の年の開きがあった。次の出羽海は自分という
思いが九重にはあった。

だが、それはもろくも打ち砕かれた。元出羽ノ花が出羽
海になった昭和35年12月から約2年4ヶ月後の昭和38年
4月にあることがおきた。それは大関佐田の山が出羽海
の市川家に婿入りしたのである。

出羽海部屋は昭和41年9月に鉄筋ビルにつくりかえたと
き、部屋の名義は横綱佐田の山のものになっていた。こ
れで九重の出羽海継承の可能性は完全になくなった。

九重は独立の腹を固めていた。独立にあたっては連れて
いく弟子の問題があった。当時の関取は先代出羽海と九
重が連れてきた弟子がほとんどであった。

昭和42年一月場所後の31日午後4時出羽海部屋の3階大
広間は重苦しい雰囲気が支配していた。正面中央に机を
前にした出羽海(元出羽ノ花)。その右には秀の山(元
笠置山)、左には分家の春日野(元栃錦)、さらに左サ
イドに不知火(元八方山)、藤島(元出羽湊)、出来山
(元汐ノ海)、田子ノ浦(元出羽錦)、松ヶ根(元羽島
山)、峰崎(元那智山)、境川(元大起)、阿武松(元
大晃)が2列に並んでいた。出羽海の下座には九重(元
千代の山)が正座するといういささか時代がかった光景
となっていた。
九重2
<九重部屋の独立を報じる大相撲(読売新聞社刊)>
 
出羽海は低頭する九重を前にして口を開いた。「君の申
し入れた部屋の分離を承認する。ただし、要求した力士
のなかに親が反対している者が3人いるから残すように。
あとはよろしい」英断だった。九重の申し入れがほぼ受
けいられたカタチになった。だが、出羽海はこう続けた。
「分離によって君と所属力士は出羽海、春日野といった
一門からはずす。いいな」名門からの破門である。九重
は承諾した。

出羽海が九重だけ出て行けというような強行意見を採用
しなかったのは、以下によるものだと考えられる。
1.お家騒動になっては相撲人気に大変なマイナスである
こと
2、認められなければ九重は力士を連れて脱退覚悟で
あったこと
3.そうなれば協会裁定で出羽海・九重の両者に謹慎の
可能性がでて、醜態を世間にさらしてしまう結果になる
こと
4.北の富士らの決意は固く、最悪髷を切る覚悟であった
こと
5.新聞に九重とともに行動する力士の名前が出てしまい、
出羽海部屋にいずらい流れが出てきたこと
6.将来佐田の山が出羽海を継ぐにあたり、不満分子を
一掃できること

知恵者出羽海ならではの決断であった。こうして九重部
屋は破門独立して誕生した。

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  • この記事を書いた人
denkouriki

denkouriki

無類の相撲好き。きっかけは昭和42年、九重(元千代の山)が分家独立を許さない不文律の出羽海部屋から破門独立したことです。そのさい、千代の山を慕ってついていった大関北の富士がその直後の場所で初優勝した。こんな劇的なドラマを見せられたことが、大相撲から離れなくなりました。視点は監察委員を八百長Gメン、燃える要素があると強い北の富士を循環気質と呼んだ杉山桂四郎氏に。土俵の心は玉の海梅吉氏に、問題点を探るのは三宅充氏に、そして相撲の本質、真髄は小坂秀二氏に学んできました。本場所は地方場所を含めて年間半分くらい観戦しています。大相撲に農閑期はなく、随時執筆していきます。興味深く読んでいただければ幸いです。

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