朝から冷たい雨が降りしきる両国国技館。優勝争いのト
ップにいた照ノ富士が稀勢の里に圧倒され足からくずれ
て寄り倒された。完敗である。このところ、稀勢の里を
寄せ付けない相撲を取っていたが、そうはいかなかった。
照ノ富士は連敗で2敗となった。優勝争いは鶴竜と2敗
併走となったが、11連勝していた勢いは消えた。照ノ富
士にスキあり、勝機あり、そんな雰囲気に変わってきた。
関脇で優勝して、大関2場所目に優勝した力士に北の湖
がいる。若くて伸び盛りで破竹の勢いがあった。関脇で
14勝1敗で初優勝、大関で10勝5敗、13勝2敗で優勝、
13勝2敗で優勝同点。北の湖は大関を3場所で突破して
史上最年少で横綱になった。
今の照ノ富士に北の湖のような勢いはない。そもそも連
敗力士は優勝できないといわれている。負傷した足が気
がかりである。こうみてくるとマイナス要因のオンパレ
ードばかりである。このままずるずると負けが込むよう
だと、行く末はますます暗くなる。連日満員札止めの過
熱人気に水をさすことにもなる。
照ノ富士は持ち直せるか。それは照ノ富士の気持ち次第
である。昭和27年秋場所、関脇栃錦は13日目を終え12勝
1敗。14日目は同じく12勝1敗の大関吉葉山との対戦で
ある。ところが前夜、栃錦は扁桃腺炎で40度の高熱に苦
しんでいた。医者も師匠の元栃木山の春日野も出場は、
絶対無理とストップをかけた。
<栃錦のブロマイド>
ところが、栃錦は「お客さんはこの一番を見に来る。絶
対休みません。出ます」と強い意志で強行出場すること
になった。このことはかん口令がしかれ、誰も知らなか
った。14日目、栃錦と吉葉山の1敗同士の勝負は栃錦
が、二枚蹴りで吉葉山の巨体を宙に浮かせ落とした。
<吉葉山のブロマイド>
残り2日間、照ノ富士は栃錦のごとく気力をふりしぼっ
て優勝争いを盛り上げていただきたい。
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