いなくなって初めてわかる、その巨大な存在感、存在価
値、それが白鵬である。横綱として初の休場だけにこれ
まで白鵬がいない土俵は想像すらしたことはなかった。
白鵬ほど大相撲冬の時代を支えた横綱はいない。それも
単なる不人気のときではない。新弟子暴行死事件、野球
賭博事件、八百長の発覚、まさに激震の時代である。そ
の結果賜杯が渡されなかったことが2度あった。
白鵬がいない土俵、それはほか力士に優勝のチャンスが
できたといえる。しかし、問題はレベルである。白鵬が
いる土俵は陸上競技の100メートル競争に例えるならば
9秒台の優勝であった。白鵬がいない土俵ではそれが10
秒台の優勝ならばレベルダウンしたことになる。観客が
見たいのは最高のレベルである。
絶対王者がいない土俵では、早くも横綱・大関の敗戦が
おき始めた。混戦を面白いととらえる一方、白鵬に勝っ
てこそ優勝に価値が出るという見方がある。来場所、不
屈の精神力で復活する白鵬を見たいし、期待したい。