冷たい雨が降りしきる中、この日も平日とは思えぬ満員
札止めと盛況。全勝白鵬は琴奨菊のこれしかないという
あたりを受け止めた上で出足鋭く一気に寄り立てた。
完勝である。中盤相撲に乱れのあった白鵬であるが、
ここへきて手の内を知りつくしている大関陣だけに修正
してきた。
回数は減るものではないとはいえ、節目の数字にはちがい
ない。6場所時代の申し子大鵬に対し、白鵬は6場所
時代の記録更新王の道を歩んでいる。横綱最多勝利、
幕内最多勝利、通算最多勝利更新も可能である。
2010年、白鵬は双葉山の69連勝に挑んだ。結果は63連勝
に終わったが、唯一連双葉山の勝記録に迫った横綱で
あった。しかし、双葉山は69連勝したから偉大なのでは
ない、と言ったのは双葉山に傾倒し、相撲を見る目を
双葉山を基準に置いた小坂秀二氏であった。
相撲の本質に狂いのない目を向け、研究とけいこによって
自己の限界に挑戦し、土俵の土にそのみごとな融合を
見せた人として、双葉山以上の人を私は知らない。
土俵上の双葉山に、単なる力闘者ではない、求道者の姿を
見たのは、決して私ひとりではあるまい。双葉山の求めた
ものは、相手から得られる勝利でもなく、まして観衆の
賞讃でもなかった。言うなれば、相撲を通じての自己
完成への努力であろう。(がちんこ相撲-だれが現代の
双葉山か- 小坂秀二著 いんなあとりっぷ社刊より)