長年に渡り、学生出身の横綱は輪島だけだった。輪島が横綱として
として登場したのは昭和48年七月場所だった。旭富士は中退のため、
学生出身にカウントされていない。輪島から半世紀以上を経て学生
出身の横綱大の里が誕生した。
新横綱の場所輪島は11勝4敗でおわった。大の里も11勝4敗だった。
ところが数字は同じでも状況はまるで違う。輪島は先輩横綱の北の
富士と琴櫻がいた。大関は3人いた。

輪島が新横綱の場所北の富士と琴櫻は優勝決定戦をするほど好調だ
った。それも14勝1敗同士の優勝決定戦だった。最近では見ること
のないレベルである。先場所全勝優勝した輪島は先輩横綱に敗れて
いる。あとの2敗は大関貴ノ花と関脇三重ノ海である。金星配給は
なかった。
脅威だったのは押し相撲で大関に挑んだ関脇大受である。手がつけ
られないほどの押し相撲だった。北の富士の1敗は大受によるもの
であった。輪島はこの大受に対し前みつを取った。大受は抵抗し、
押したが輪島は最後までまわしを離さず勝利した。
大の里の周辺はどうか。先輩横綱に豊昇龍がいるが、横綱の力量に
疑問がもたれている。大関琴櫻は勝ち越すのがやっとで精彩がない。
つまり、大の里の前に立ちふさがる力士はいないわけである。それ
でも4敗した。すべて平幕である。幕内下位も入っている。いきな
り金星4個を配給してしまった。

輪島と大の里は同じ11勝4敗でも似て非なるものであった。