北の湖、千代の富士、貴乃花には共通点がある。そ
れはいずれも新入幕のとき負け越していることであ
る。しかも幕に留まれず、十両落ちを経験している。
そこから10大横綱にかけあがったのだけれど、個別
にみていこう。
北の湖の新入幕は昭和47年一月場所である。一人横
綱北の富士の乱調が始まった場所だった。北の湖は
西12枚目、つまり幕尻だった。年齢は若く18歳であ
った。
ところが相撲は負け続きで初日から7連敗している。
しかもこのなかには十両力士に負けた3敗がはいっ
ている。結局この場所は5勝10敗と惨敗した。ただ、
十両1場所で再入幕してきた。北の湖が初優勝した
のは新入幕から2年後のことであった。
千代の富士の新入幕は昭和50年九月場所であった。
大関貴ノ花が2回目の優勝を遂げた場所であった。
千代の富士は投げ中心の相撲であった。脱臼癖があ
り、これが出世を妨げていた。
新入幕で5勝10敗と負け越した千代の富士はそれだ
けでは終わらなかった。幕下にまで番付を下げたの
である。幸い幕下は2場所だけだったが、再入幕ま
で2年2場所かかった。脱臼癖を克服するために、
筋肉で固め、取り口を前みつを取って出る相撲に変
えた。横綱北の湖との優勝決定戦を制しての初優勝
は日本中が熱狂した。新入幕から5年半経っていた。
貴乃花は父貴ノ花の息子として入門のときから騒が
れ、注目されてきた。入門時の四股名は貴花田であ
った。順調に出世したが、新入幕は4勝11敗と大敗
した。幕下で1回負け越しがあるが、これが2回目
の負け越しであった。
十両2場所で再入幕した。新入幕から1年5場所後、
貴花田が初優勝を達成した。日本中を釘付けにした。
貴乃花の優勝は22回だったが、すべて真剣だった。
(この項目続く)