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立ち合いの妙

相撲ほど勝負時間が短い格闘技はない。ボク
シングや剣道でもあっという間に勝負がつく
ことはまれである。短時間でもひいき力士が
立つときは緊張が走る。朝青龍が現役のとき、
日本に留学していた妹が、兄の取組をみて
ドキドキしたという。

格闘技は柔道やレスリングのように組むか
ボクシングや空手のように離れて戦うかの
どちらかである。ところが相撲は離れて戦う
ことも組んで戦うこともある両面をもちあわ
せている。組んだら離れることはないと思い
がちだが、栃錦は「出し投げをうてば離れる」
と言っていた。

<2021年7月 白鵬と照ノ富士の全勝決戦の立ち合い>

相撲は自分の力が発揮できる体勢をつくる
ための戦いであり、しのぎあいである。その
勝負の始まりは立ち合いになる。勝負を大き
く左右をするのが立ち合いである。

デビット・ジョーンズ氏はかつてパンアメリ
カン航空の優勝力士の表彰者であった。彼は
特に優勝を争う力士が仕切りを重ねることほど
エキサイティングなものはないと語っていた。
その立ち合いは両力士にゆだねられている。
陸上や水泳のように第3者がスタートさせる
ようなことはない。

<栃木山のブロマイド>

相撲は先に攻めたほうが有利だが、それでは
立ち合いは成り立たない。栃木山は「同時に
立って早く攻めろ」、と立ち合いのあり方を
述べていた。

双葉山といえば「後の先」の立ち合いを完成
させたことは有名である。白鵬がごく一時期
取り入れたことがあった。だが、言葉から
か、相手より後で立ったように映った。

<双葉山のブロマイド>

双葉山が後の先の立ち合いを身につけたのは
69連勝の時期ではない。昭和15年夏場所は
7勝5敗3休とどん底だった。「信念の歯車
がくるった」という言葉はこのときである。
人里を離れ山にこもった双葉山は精神的に
ふっきれ、稽古はいっそう充実していった。
後の先の立ち合いはこのときのものである。

双葉山の立ち合いは腰を割って足をきめると、
まず左手をつく。右手はひざの上にあって、
相手の動きを見ながら合わせていって、サッ
とおろす。おろして、砂についたときが立っ
たときである。だから、おろすのは相手の
ほうが早くても、立って土俵から手が離れる
瞬間は双葉山のほうが早いのである。(大相
撲1969年2月号 相撲技論小坂秀二筆 読売
新聞社刊より)

<双葉山の仕切り ブロマイドより>

後の先の立ち合いは相手より遅れて立つよう
に映るが、実際はそうでないことが読み取れ
る。まさに極意中の極意である。仕切りの妙、
立ち合いの真髄はここにある

ウクライナが心配です。             。
興味深いテーマをこれからもお届けします。

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この記事を書いた人

無類の相撲好き。本場所は地方場所を含めて年間半分くらい観戦しています。大相撲に農閑期はなく、随時執筆していきます。興味深く読んでいただければ幸いです。お問い合わせなどあれば管理をお願いしてる masaguramさんまでX(Twitter)ください。

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