七月場所を前に勢が引退した。今年(2021年)
の一月場所、十両13枚目と下に1枚残しだけ
の地位に追い込まれた。千秋楽を迎え、6勝
8敗で優勝争いトップの剣翔と対戦すること
になった。勝てば十両残留が確定する大事な
一番だった。ところが、勢は休場してしまっ
たのである。これで勢の幕下落ちが決定した。
勢は幕下2場所を全休した。そして引退した。
![](https://dohyounomokugekisya.net/wp-content/uploads/2021/06/210123十四日目十両幕下以下-901大翔鵬対勢.jpg)
勢はどんな土俵歴を刻んできたのか。改めて
ふり返ってみよう。勢はとにかく幕下が長か
った。十両に上がれずに終わるのでは、と
思った時期があったほどである。結局序ノ口
から38場所かかって十両に昇進した。幕下の
勢で忘れられないのは2006年の九月場所で
ある。
![](https://dohyounomokugekisya.net/wp-content/uploads/2021/06/勢A-1024x492.jpg)
それは佐渡ヶ嶽(元琴ノ若)部屋の琴冠佑
との一番後におきた。土俵では張り手をまじ
えた激しい相撲になった。敗れた琴冠佑は
勢の支度部屋までのり込み、勢いを殴打する
行為にでたのだ。プロレスにもない展開で
ある。琴冠佑はこの場所限りで引退する予定
だった。ところが、師匠の佐渡ヶ嶽は琴冠佑
の暴走にカンカンとなった。場所の途中で
引退させてしまった。勢は幕下でとんでも
ない目にあったわけである。
![](https://dohyounomokugekisya.net/wp-content/uploads/2021/06/080127千秋楽幕下以下-139勢.jpg)
幕下以下では優勝がなかった勢だが、新十両
の場所(2011年十一月場所)12勝3敗で優勝
している。翌場所10勝5敗で入幕を決めた。
ところが幕内では勝ち越せず、エレベーター
を繰り返していた。幕内に定着したのは2012
年十一月場所からである。
![](https://dohyounomokugekisya.net/wp-content/uploads/2021/06/20120311初日十両-589新入幕.jpg)
横綱・大関と対戦したのは幕内定着3場所目、
新入幕から7場所目の2013年三月場所であっ
た。横綱は日馬富士・白鵬、大関は稀勢の里・
琴欧洲(この場所途中休場)・鶴竜・琴奨菊
であった。琴奨菊戦はなぜかなかったが、
横綱・大関戦は4敗、成績も4勝11敗と完敗
した。2013年は上位戦が2場所あったが、
横綱・大関には勝てなかった。そんななか、
幕内中位、11勝4敗で敢闘賞を受賞した。
2014年は上位戦が4場所に増加した。横綱
には勝てなかったが、大関琴奨菊に3勝した。
幕内中位で大勝して2回目の敢闘賞を受賞
している。またこの年、小結に昇進した。
2015年は1勝14敗、2勝13敗と大敗した年で
あった。同時に11勝4敗、12勝3敗と大勝
している。この活躍で敢闘賞を2回受賞して
いる。
![](https://dohyounomokugekisya.net/wp-content/uploads/2021/06/140118七日目幕内-754琴奨菊対勢-e1624423970314.jpg)
変化があったのは2016年であった。横綱戦に
初勝利した。鶴竜から2勝、白鵬から1勝
した。しかし、横綱に勝った場所はいずれも
負け越している。三月場所では横綱・大関戦
は部分対戦であったが、10勝して翌場所は
最高位の関脇に昇進している。2017年は横綱・
大関とフル対戦して勝ち越している。また、
横綱戦は4勝(1不戦含む)6敗の成績を
残した。鶴竜、白鵬、稀勢の里から勝利した。
![](https://dohyounomokugekisya.net/wp-content/uploads/2021/06/160718九日目幕内-738白鵬対勢.jpg)
2018年からは下降線をたどっていった。年齢
は31歳になっていた。横綱・大関戦は勝て
なくなっていた。2019年は十両落ちがあった。
それは2020年も変わらなかった。明らかに
晩年にはいっていた。2021年、幕下落ちでは
土俵にあがることはなかった。33歳、ついに
勢は引退を決意した。今後は年寄春日山とし
て後進の指導にあたることになる。親方人生
に幸あらんことを願わずにはいられない。
朝からゲリラ豪雨がありました。
興味深いテーマをこれからもお届けします。