一月場所、新入幕の竜電は10勝5敗の好成績
で敢闘賞を受賞した。竜電が土俵に上がると
声援が飛ぶ。竜電は現在27歳である。これ
までどのような出世街道を歩んできたのか、
ふり返ってみよう
ある。同期には一月場所優勝の栃ノ心がいる。
栃ノ心は序ノ口からわずか10場所で十両昇進
というスピード出世だった。それに比べ、
竜電はなんと38場所、6年以上かかって関取
になった。勝ち越し22場所、負け越し16場所
と時間を要している。
平成24年十一月場所、ようやく十両入りを
果たした竜電だが、予想もしない不幸に襲わ
れた。8日目、右股関節を骨折。結局新十両
の場所は途中休場になり、幕下に降格する
ことになった。幕下は2勝5敗。その後2場
所全休、途中休場、2場所全休で番付はなん
と序ノ口まで落ちることになった。ケガの
影響はとてつもなく大きなモノであった。
序ノ口で全休すれば番付外になる。番付外に
なれば前相撲からやり直しである。それだけ
ではない。養成費が支給されなくなってしま
う。この2つを解消するために竜電がとった
行動は、7番目の相撲だけに出場することで
あった。
対戦相手の中には相撲のすの字も知らない
力士もいる。髷があっても不成績者である。
筆者は竜電の序ノ口の7番目の相撲をすべて
見ている。竜電は相手にケガをさせまいと
やんわり相撲を取っていた。竜電の序ノ口
1勝6休は平成26年一月場所から4場所続い
た。
<序ノ口竜電7番目の相撲>
ケガから復帰すると、竜電は序ノ口・序二段・
三段目と3場所連続優勝して幕下に番付を
戻した。幕下10場所を経て平成28年十一月
場所、十両に復帰した。十両では大勝ちは
ないが、6場所勝ち越し、1場所負け越しの
成績で新入幕を果たしたのである。入幕と
敢闘賞は、苦労人が報われた瞬間であった。