玉鷲といえばこれまで目立つ存在ではなかっ
た。十両には5度転落している。つい最近
まで三賞とは無縁であった。横綱・大関
にはもしかしたらという恐さを与えられる
ような相撲ではなかった。このままではイン
パクトの薄い力士に終わっても不思議はなか
った。
<新入幕の玉鷲>
そういう印象だから、昨年(平成28年)の
十一月場所の初日に次のように書いている。
一番取りいい相手と思える玉鷲相手に、まさ
かの内容であっけなく敗れたのが日馬富士で
ある。玉鷲の突き落としにくずれ、そのまま
向こう正面に押しだされた。日馬富士に取り
こぼしはつきものだが、まさかの相手であっ
た。
<H28年十一月 横地な日馬富士を倒す玉鷲>
今までの延長で玉鷲を見ていたのでこうした
記述になってしまった。しかし、玉鷲の相撲
が変わったのは、この場所からであった。
威力のある突き押し相撲が開花したのである。
それが初日から横綱日馬富士を倒す結果に
つながったのである。この場所は突き押し
相撲がさえ、3大関を倒して10勝5敗の好成
績。初めて横綱・大関全員と対戦して勝ち
越した。そして初三賞となる技能賞を獲得
した。玉鷲このとき32歳。新入幕から49場所
目のことであった。
<平成28年十一月場所 玉鷲技能賞を受賞>
相撲が変わった例に琴桜がいる。琴桜は柔道
出身ということで投げ技が多かった。昭和39
年一月場所新小結で横綱柏戸と対戦して骨折、
全治3ヶ月という重症で十両まで落ちた。
災い転じて福と成す。琴桜はこれを境に立ち
合いぶちかます相撲。左のど輪右おっつけの
相撲に変わった。この相撲で大関・横綱に
昇進した。
千代の富士が投げ技中心から、前褌を取って
出る相撲に切り変えて、大横綱になったエピ
ソードは、あまりにも有名である。
<H29年一月 鶴竜を圧倒する玉鷲>
琴桜にしても千代の富士にしても20代のころ
である。玉鷲は32歳である。ここに玉鷲特有
の驚異的変化がある。玉鷲の快進撃は続く。
横綱・大関に一歩間違えたらやられると思わ
せた。今年の一月場所、三月場所を関脇で
勝ち越した。3場所連続三役での勝ち越しで、
もはや完全に実力者として存在価値を示した。
五月場所、再び旋風をおこす可能性は大いに
ある。
五月場所は相撲仲間との観戦が多くなりそう。
興味深いテーマをこれからもお届けます。
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