四股名に動物の字が入った幕内力士を田口 通廣が数えると、哺乳類でいちばん多かったのは虎で、次が馬と鹿(どちらも7種類)だった。虎は竜虎・巌虎など、馬は横綱の日馬富士や大関の有馬山、鹿は69連勝が止まった後の双葉山を破った鹿嶋洋などがいる。
対象は番付が現存する宝暦7年10月以降の江戸・東京の幕内(上段)力士で、同じ四股名の襲名は種類に数えない(2020年10月の記事)。動物編は全4回で、この回は虎・馬・鹿。
動物の四股名を調べたきっかけと数え方
2020年九月場所、新入幕の翔猿が活躍して、その名を広く知らしめた。テレビの司会者が「最初しょうえんと読むのかと思ったよ」と発言していた。そこで田口は、動物にちなんだ四股名を調べてみることにした。

この連載の数え方(田口 通廣が決めた条件)
- 動物といっても、竜(龍)・麒麟・鳳・鵬などの伝説や空想上の動物は含めなかった
- 鯱は「しゃち」と読む四股名は入れ、「しゃちほこ」と読む四股名は入れなかった
- 獅子はライオンの別称ということで含めた。唐獅子(そういう四股名はなかったが)は別物とした
- 四股名は最終の名を原則採用したが、もっとも通っている名にしたものもあった。入幕したときは鰐石(わにいし)だったが、のちに剣山と改名したため、惜しくも(?)動物の四股名からはずれることになった
- 対象は、番付が現存する宝暦7年10月以降の江戸・東京の幕内(上段)力士とした
虎がつく四股名|哺乳類でいちばん多い
同じ四股名の襲名は含まずに種類で数えると、哺乳類を含む名で最も多かったのが虎であった。虎の四股名に襲名はなく、すべて一代限りであった。
| 時代 | 四股名 | 田口の注 |
|---|---|---|
| 江戸(明和) | 虎渡 | 江戸時代の虎はこの3力士のみ。3人とも上段1場所で終わっている |
| 江戸(明和) | 虎ヶ嶽 | |
| 江戸(明和) | 虎灘 | |
| 明治 | 荒虎 | 明治では1人。小結になった |
| 昭和40年以降 | 竜虎 | 小結になった |
| 昭和40年以降 | 巌虎 | |
| 昭和40年以降 | 影虎 | |
| 昭和40年以降 | 猛虎浪 |
明治の荒虎から時を隔てて虎の四股名が登場したのは、昭和40年以降になる。このあたりになると、耳にしたことがあるのではないか。竜虎が登場したときは、竜虎相うつという言葉からわかるように2匹いて成り立つものなので、一人で竜虎とはいかがなものかという見方があった。

馬がつく四股名|横綱日馬富士まで7種類
次に哺乳類を含む名が多かったのが馬で、7種類ある。江戸時代は3種類で、平成以降の直近の4人はすべてモンゴル出身である。田口は、モンゴルと馬は切り離せないということかと書いている。
| 時代 | 四股名 | 田口の注 |
|---|---|---|
| 江戸 | 相馬山 | 怪童というだけの看板力士であった |
| 江戸 | 荒馬 | 江戸時代に寛政・文化・天保と3人いた |
| 江戸 | 有馬山 | 大関までいった |
| 平成以降 | 若兎馬 | |
| 平成以降 | 日馬富士 | 横綱にまで駆け上がった |
| 平成以降 | 白馬 | |
| 平成以降 | 千代翔馬 | 現役(2020年10月の記事の時点) |
| 平成以降 | 霧馬山 | 現役(同)。どこまで出世するか、素材はいい |
その霧馬山は、令和五年七月場所に大関へ昇進し、いまは霧島を名乗っている。協会の力士プロフィールのしこ名履歴は「霧馬山→霧島」で、2026年9月27日の確認では東大関である。ほかの関取の改名は力士の改名・旧四股名 一覧にまとめた。

鹿がつく四股名|双葉山に土をつけた鹿嶋洋も
馬と同様に7種類あった哺乳類を含む文字が、鹿である。江戸時代は4人、明治は1人、昭和は2人いる。
| 時代 | 四股名 | 田口の注 |
|---|---|---|
| 江戸 | 鹿間津(しかまつ) | 鹿間津はしかまつ、雄鹿島はおしかじまと読む。上段1場所在位であった(原文のまま) |
| 江戸 | 雄鹿島(おしかじま) | |
| 江戸 | 鈴鹿山 | 巨人の看板だけの力士であった |
| 江戸 | 鹿島灘 | このあと秀の山雷五郎を名乗り、クレームを受けている |
| 明治 | 鬼鹿毛(おにかげ) | |
| 昭和(戦前) | 鹿嶋洋 | 双葉山は69連勝で連勝が止まった後に3連敗し、その3連敗目が鹿嶋洋であった |
| 昭和 | 平鹿川(ひらかかわ) | 昭和31年の入幕だから、鹿の文字が消えて久しい |

虎・馬・鹿の四股名についてよくある質問
Q. 動物の字が入った四股名で、哺乳類でいちばん多いのは?
A. 虎です。同じ四股名の襲名を含めずに種類で数えると、哺乳類を含む名で最も多く、次が馬と鹿(どちらも7種類)でした。
Q. 虎がつく四股名の力士は?
A. 江戸の虎渡・虎ヶ嶽・虎灘、明治の荒虎、昭和40年以降の竜虎・巌虎・影虎・猛虎浪です。小結になったのは荒虎と竜虎だけでした。
Q. 馬がつく四股名で横綱・大関になったのは?
A. 横綱は日馬富士、大関は江戸時代の有馬山です。2020年に現役だった霧馬山は、のちに大関に上がって霧島を名乗っています。
Q. 双葉山の連勝が止まった後に土をつけた「鹿」の力士は?
A. 鹿嶋洋です。双葉山は69連勝で止まった後に3連敗し、その3連敗目が鹿嶋洋でした。
Q. どの範囲の力士を数えていますか?
A. 番付が現存する宝暦7年10月以降の江戸・東京の幕内(上段)力士です。竜・麒麟・鳳・鵬などの伝説や空想上の動物は含めていません。
▶ 連載「四股名あれこれ 動物編」全4回
動物編1 虎・馬・鹿(哺乳類)(本稿) | 動物編2 熊・獅子・狼・猪・象・牛・猿と鳥 | 動物編3 鶴・鷹・鵆(鳥類) | 動物編4 鷲・蛇・鯱・鯉・蜂
田口 通廣の四股名の記事 一覧(連載「四股名の大元」「四股名のルーツ」「四股名あれこれ」ほか)
〔四股名の大元〕玉(片男波部屋)|栃(春日野部屋)|琴(佐渡ヶ嶽部屋)
〔四股名のルーツ〕○○富士|○鵬&○海(かい)|○風|○○里|寺尾という四股名にこめられた思い
〔四股名あれこれ〕1文字の四股名|頭に若がつく四股名|本名の四股名|四股名のパターン|丸と城と王|~の山|東西南北|動物編(本稿)(全4回)|~花(上・中・下)|ひらがな変換編|~の・ノ・乃海(全5回)|本名をもじったもの(上・下)|春日野部屋編
〔一覧とクイズ〕力士の改名・旧四股名 一覧|伝統の四股名|四股名クイズ
▶ あわせて読みたい:翔猿の出世街道/力士の改名・旧四股名 一覧/四股名のパターン(四股名あれこれ)