一月場所中豊真将が引退した。2014(平成26)年の七月
場所以降休場が続いたが、ケガには勝てず33歳で土俵を
去った。最後の場所は幕下にまで陥落していた。最高位
小結、幕内在位46場所、敢闘賞5回、技能賞1回受賞。
埼玉栄高校から日大へ進学するも病で相撲部を退部。その
間アルバイトに取り組む。アルバイト先の社長の仲介で
寺尾の部屋へ入門するが、3年のブランクに苦労する。
里山とは日大相撲部の同期生にあたる。
豊真将が一段と力をつけてきたと感じたのは2011(平成
23)年九月場所である。この場所では4日目大関日馬富士
を一方的に突きたて、押し出した。把瑠都、琴欧洲に
続いての勝利で3大関を撃破した。この場所前頭筆頭で
10勝5敗の好成績を残した。
ところで豊真将には異色の記録がある。それは初日から
14連敗で千秋楽をむかえたことと初日から14連勝で千秋楽
をむかえたことの両方を経験しているのである。
初日から14連敗で千秋楽をむかえたのは2009(平成21)年
五月場所である。前頭筆頭の豊真将は連日横綱、大関を
はじめ上位との対戦で0勝14敗。千秋楽は前頭5枚目で
4勝10敗の嘉風と対戦した。筆者はこのとき国技館内に
いたが、異様な盛り上がりをみせた。豊真将よ、全敗だけ
はしてくれるな、この一番だけは勝ってくれという悲痛な
声援であった。そのかいがあって?最後の最後で豊真将は
回生の1勝をあげた。
もう一つの記録である初日から14連勝したのは2014(平成
26)年三月場所である。最近のことなのでご記憶の方も
いると思う。豊真将が十両優勝した場所である。前場所
幕内で全休した豊真将は十両2枚目まで落ちていた。十両
では実力の違いをみせ、14戦全勝で千秋楽をむかえた。
千秋楽は十両5枚目7勝7敗の大道と対戦した。勢いの
あるはずの豊真将は痛恨の1敗で全勝優勝を逃した。
<大道に痛恨の1敗の豊真将>
豊真将は勝敗だけでなく、土俵上の礼、懸賞を受け取る
手刀がきれいな力士だった。親方人生では第2の豊真将を
ぜひ育ててほしい。