その男は観客席に座っていた。場所は、まだ
お客さんがまばらな福岡国際センターで
あった。男の担当は監察委員であった。彼は
稀勢の里の師匠であった。観客席に座って
いたため、その男=元元隆の里の鳴戸親方は
福岡では身近な存在であった。
<元隆の里の鳴戸親方>
そんな親方の話を聞こうと、記者が周囲を
取り囲んでいる光景をよく見かけた。筆者が
近くのいす席で撮影していたカメラのことを
興味深く尋ねてきた。使用している望遠レン
ズで見るとどのように見えるのかのぞき、
弟子の若の里をパチリと撮影した。
筆者は部屋の幕下隆の山に特に注目している
ことを話した。特に佐田錦に仕掛けた掛け
投げは豪快そのものであった。親方に対し、
たまに観客から「現役時代はなんと言う名前
でしたか」と聞かれても「いやいや、そんな
有名ではありませんでしたから」と天下の
元横綱が答えていた。
<隆の山の豪快な掛け投げ>
また、あるときはビデオデッキの再生・止め
る、を激しく動かし、故障してしまった話を
聞かされた。電気店に「どうしたらこんな
故障になるのですか」と聞かれたという。
親方が力士の取り口を熱心に研究しようと
した結果であった。
さらに横綱の土俵入り後、取組が始まるまで
の間、このとき何かできればいいんだけれど
と、気にとめていた。
平成22年十一月場所2日目は、弟子の稀勢の
里が白鵬の連勝を63でストップした歴史的な
日であった。記念すべき連続写真45枚ほどを
A4サイズにして場所中に親方に進呈した
ことも忘れられない。その写真は今でも稀勢
の里の手元にあるのだろうか。
名古屋は外は暑く、館内は観客が少ない
うちは寒い。
興味深いテーマをこれからもお届けます。
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