大の里は暑い七月場所を11勝4敗の成績を残した。数字的にはまず
まずだが、横綱合格とはいかない。同じ横綱の豊昇龍は早々と休場
した。大関琴櫻以外は関脇以下である。その中で優勝争いができな
かった。4敗はすべて平幕で金星を配給し過ぎた。
九月場所、横綱の権威を取り戻すには優勝しかない。冷静に考えれ
ば大の里に対抗できる力士はいないはずである。豊昇龍は横綱の力
量があるのか疑問符がつく。大関琴櫻は低迷が続いている。ともに
優勝を争える状態ではない。

大の里は優勝できる環境にある。優勝できるときに逃すのは自滅の
ケースである。敵は自分のなかにある。新しい力が追ってくるまで
には時間がかかる。新しい力の有力候補は安青錦である。
学生出身の先輩横綱輪島は横綱2場所目に全勝優勝を達成している。
全勝優勝は2回目であった。大の里には未知の領域である。大の里
はスピード出世で横綱になった。それ自体はすばらしいが、まだま
だスキがある。

大鵬は優勝を独占した。一番強い大鵬が最も稽古した。元力士の評
論家に意見を求めた。まだ不足の点はないか。師匠のニ所ノ関(元
佐賀ノ花)は「ここで負けたら時代が変わるぞ」とよく言って激励
した。
大の里は新米横綱の域を脱したほうがいい。大鵬のようにひたすら
自分が強くなることに邁進することである。そのためにも大の里は
九月場所でまず優勝することである。できなかった場合は一歩も進
んでいなかったことになる。大の里のこれからは九月場所にかかっ
ている。