大鵬の晩年は個人的には昭和44年七月場所からだと思っている。こ
の場所柏戸が引退した。優勝争いは千秋楽を迎え、3敗横綱大鵬、
大関清國・琴櫻、平幕藤ノ川となった。千秋楽は、藤ノ川が勝ち、
いやなやつが来たなという表情の琴櫻が敗れた。結びは3敗同士の
大鵬と清國が対戦した。大鵬には何がなんでも勝つという意気込み
は見られなく、敗れた。優勝決定戦は清國が藤ノ川を倒して初優勝
を成し遂げた。

翌九月場所、大鵬は大関玉乃島との直接対決に敗れ、優勝を逃して
いる。優勝は13勝2敗の玉乃島で大鵬は11勝4敗に終わった。十一
月場所は途中休場し、昭和45年の一月場所は全休している。この間
北の富士・玉乃島は横綱昇進を決めていた。
迎えた三月場所北の富士・玉乃島改め玉の海は新横綱として登場し
た。場所の宣伝ポスターは北の富士・玉の海で大鵬の姿はなかった。
これが大鵬に火をつけたのか。終盤は大鵬・北の富士1敗。玉の海
全勝で横綱リーグ戦に突入した。大鵬は玉の海・北の富士を撃破し
優勝してしまった。北の富士戦はなんと首投げで勝っている。大鵬
は昨年の五月場所以来の優勝を達成した。
五月場所大鵬は、優勝はできなかったが、またしても玉の海・北の
富士を倒した。特に千秋楽は全勝優勝を目指す北の富士と投げの打
ち合いになった。大鵬すくい投げ、北の富士上手投げで土俵にゆっ
くりと沈んでいった。わずかに大鵬がまさり、北の富士の全勝優勝
はならなかった。「先輩横綱は苦労して全勝優勝している。横綱2
場所目のやつに全勝されてたまるか」という大鵬の意地だった。

翌七月場所、大鵬は引退騒動をおこしている。大鵬の引退だから大
騒ぎになった。結局引退はせず、途中休場となった。この場所は千
秋楽を迎え、2敗に北の富士、関脇前の山・大麒麟であった。千秋
楽前の山と大麒麟は直接対戦する。この一番は、前の山が変化から
突き出した。優勝決定戦となり、北の富士が前の山を下して5回目
の優勝を達成した。大鵬にはこの後新たな対決が待ち受けていた。
(この項目続く)